「社会通念」をつくるもの


同性同士は事実婚に当たらないと名古屋地裁
2020/6/4 15:35 (JST)6/4 15:47 (JST)updated


 同性パートナーへの犯罪被害者給付金を巡る判決で名古屋地裁は、「同性間の関係が事実婚に当たると認めることはできない」と指摘した。
https://this.kiji.is/641163928510776417

最初に読んだ共同通信のベタ記事は松岡宗嗣氏*1のツィートなしでは具体的な出来事として理解することはできなかった。
NHKが詳しく伝えていたので、引用してみる;

同性パートナーへの支給認めず 遺族給付金訴訟で名古屋地裁
2020年6月4日 18時19分


同性のパートナーを殺害された男性が、犯罪被害者の遺族への給付金が支給されなかったことに対して取り消しを求めた裁判で、名古屋地方裁判所は「共同生活をしている同性どうしの関係を、婚姻関係と同一視するだけの社会通念が形成されていない」として訴えを退けました。

愛知県の内山靖英さん(45)は平成26年、同居していたパートナーの男性を殺害され、犯罪被害者の遺族を対象にした給付金を県公安委員会に申請しましたが、認められませんでした。

給付金の対象には、「事実上の婚姻関係」だった人も含まれていて、裁判では、内山さんが「同性どうしでも事実上の婚姻関係だった」として、取り消しを求めたのに対して、愛知県は「制度は男女の婚姻関係を前提にしている」と反論していました。

4日の判決で、名古屋地方裁判所の角谷昌毅裁判長は「税金を財源にする以上、支給の範囲は社会通念によって決めるのが合理的だ」という判断を示しました。

そのうえで、「共同生活をしている同性どうしの関係に対する理解が浸透し、差別や偏見の解消に向けた動きは進んでいるが、婚姻の在り方との関係でどう位置づけるかについては、社会的な議論の途上にあり、婚姻関係と同一視するだけの社会通念が形成されていない」として訴えを退けました。

同性パートナーの法的な位置づけをめぐっては、浮気の慰謝料に関する裁判で、ことし3月、東京高等裁判所が「同性どうしでも男女の婚姻に準ずる関係にあった」として、元パートナーに慰謝料の支払いを命じる判決を言い渡しています。


原告 内山さん「請求認められず非常に残念」
内山さんは弁護士を通じて、「同性カップルへの社会の理解が進んでいないことを理由に、請求が認められなかったのは非常に残念です」とコメントしました。


原告側弁護士 “控訴の方針”
判決について、内山さんの代理人を務める堀江哲史弁護士は「パートナーを犯罪で失ったことによる経済的・精神的打撃は、同性と異性のカップルで差はなく、それを認めない判決は、納得できるものではない。性的少数者に対する差別を放置する極めて残念な判決だ」と述べ、控訴する方針を示しました。


愛知県警「主張認められた」
判決について、愛知県警察本部は「当方の主張が認められたと理解している」とコメントしています。


専門家「後退した印象」
判決について、性的マイノリティーの支援制度に詳しい、明治大学鈴木賢教授*2は「同性カップルであっても、異性のカップルと同じように法律上保護されるという別の判決も出されているなか、今回の判決は後退した印象だ」と述べました。

一方で、「今回の判決は『社会通念の形成が必要だ』としていて、今後、さらに性的マイノリティーへの社会の理解や支援が進むと、同性カップルの法的な位置づけも変わってくるのではないか」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200604/k10012458161000.html


ちょっと疑問に思ったのは、昨年宇都宮地裁が「同性カップル」間に「事実婚した男女」と同等の貞操義務を認める判決を出しているのだけど*3、今回の判決ではこの判例はどう位置付けられているのだろうか。また、角谷昌毅は「共同生活をしている同性どうしの関係に対する理解が浸透し、差別や偏見の解消に向けた動きは進んでいるが、婚姻の在り方との関係でどう位置づけるかについては、社会的な議論の途上にあり、婚姻関係と同一視するだけの社会通念が形成されていない」と述べている。角谷は何が「社会通念」をつくると思っているのだろうか。「判決」が「社会通念」の形成に影響するとは考えないのだろうか。つまり、この「判決」は「社会通念」形成を巡る状況の中で反動的な一派に法的な正当性を与えることになり、将来、そのようにしてつくられる反動的な「社会通念」をバックに反動的な「判決」がつくられ、さらにその「判決」を法的な正当性として反動的な「社会通念」がつくられるという循環が生起する可能性を考えたことはないのだろうか。