「解題」関係

村上春樹スプートニクの恋人』とモーツァルトの歌曲、リストのピアノ協奏曲第1番を「ライトモティーフ」として用いた技法など」https://kj-books-and-music.hatenablog.com/entry/2025/11/17/065835


村上春樹の『スプートニクの恋人*1


ただ小説中に頻出する「記号」と「象徴」について書くと、本作自体が7年前に書かれた『国境の南、太陽の西*2の解題的な性格があるのではないかと思った。つまり「島本さん」の蒸発は「象徴」であるのに対して、本作ではそれに該当するようなことは終わってみたら何も起きなかった。似た2つの作品だったが、その結末は全く違っていた。私がどちらに軍配を上げるかといえば本作の方になる。

 ただそのような結末にするためには、語り手を作者自身から少し距離を置いた造形にしなければならなかったのではないか。それができたから本作のような結末が実現できたのではないかと思った。