- 作者: 黒古一夫
- 出版社/メーカー: 第三書館
- 発売日: 1993/05
- メディア: 単行本
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黒古一夫*1『村上春樹 ザ・ロスト・ワールド』(第三書館、1993)という本を持っていたことに気づいた。何時頃買ったのかは憶えていない。
この本は、「第二二回群像新人文学賞を受賞した村上春樹の処女作『風の歌を聴け』(一九七九年)*2の世界が一九七〇年八月の二週間余りの日々であることの意味は、決して軽くない」という文から始められている(p.8)。それで、面白いかもと思って頁を捲っていったのだが、出てくるのは左翼オヤジの繰り言の連発という感じで、やれやれ。
こんなことを言われても、だからどうなのよと言うしかないだろう。現在「〈アジア〉」においてこそ「村上春樹」が歓迎され・受容されているのは皮肉なことだ。「村上春樹の世界」が「どんな意味も持ち得ない」「〈アジア〉」っていまや北朝鮮くらいなのではないかしら。
村上春樹は、見せかけの「平和」と「豊かさ」のなかで〈未来〉への展望を持たずに浮遊している今日の〈都市〉の表層、あるいは気分を代表している作家なのである。例えば農の解体に苦悩する「地方」や、あるいは〈アジア〉への視点を持って〈未来〉を考える人間にとって、村上春樹の世界はどんな意味も持ち得ない。ひとはただ通り過ぎるだけである。そのことは、長編作品はもとより多くの短編が如実に物語ることでもある。そして、それが今日の「豊かな日本」に生きる人間の大半を占有している〈気分〉でもあるのだが、村上春樹はまぎれもなくこの時代が生んだ作家である。(7章「アメリカ・中国、そして短編小説」、p.176)
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/09/15
- メディア: 文庫
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- 作者: 村上春樹
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- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
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*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110709/1310185825
*2:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060313/1142223339 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090402/1238654276
*3:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090210/1234250786
*4:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071017/1192639890