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http://d.hatena.ne.jp/Talpidae/20090125/p1


「女にアラフォーはあっても、男にはアラフォーはない」? という話なのだが。取り敢えず、


(前略)消費社会化の進展に伴って各自のライフスタイルが多様化していくと、それこそエリクソンアイデンティティの話でモデル化したような、標準的な成熟のステップというものが通用しなくなる。このとき、女性の方が、まだしも生殖の問題と関連づけて、成熟のステップを構想しやすいのにたいして、男だとそうした手掛かりを見つけるのが難しい。家庭をもって一人前なんて発想はもう絶滅しかかってるでしょう。なんだかんだいっても女性の方が相対的に人生をリセットしやすいのだ。そのうえ、女性の場合、80年代から非正規雇用の増大と結びついて社会へ出ていくようになったわけだが、男の非正規雇用の増大は周回遅れのロスジェネ世代。つまり、ライフスタイルの多様化への適応も遅れていると言える。学生を見ていても、明らかに男の方が女性よりも元気がなく幼いと感じることが圧倒的に多い。

 というわけで、男の方が「成熟」のステップを見つける手掛かりに乏しい以上、「成熟」を求めるならば、そのやり方を自分自身で編み出していくしかない。となると、その分だけコストも大きい。下手すると、中学高校時代の行けてない自分を一生背負ったまま生きていかなきゃならないなんてことになりかねない。そして、たいていはそのままずっと来てしまうわけだ。そういう意味では、アラフォー問題って更年期障害に似ている。女性は意識しやすいけれど、男はたいてい意識しないでやりすごしてしまえる。とかいっていたら、最後は「男の方がかわいそうだね」って話になった。んー、やっぱりそうだったのか。

という部分を切り取っておく。
たしかに、再帰性、自己客体化の要請というか、近代社会では自明なままに歳を重ねることは困難になっている。そのひとつの表れが、例えば小林多寿子さんなどが述べている、ライフ・ヒストリー(自伝)への欲望の増大ということになるのだろう。「消費社会化の進展」を含む社会変動が労働世界への参入や生殖家族(family of procreation)の形成という「成熟」の結節点をますます曖昧化しているということもその通りなのだろう。
ただ、「男はたいてい意識しないでやりすごしてしまえる」のか。以前宮台真司氏(『野獣系でいこう!!』)が述べていたオヤジのハルマゲドン的ユートピアとしての「心中」(『失楽園』幻想)というのがあったけれど。それはともかくとして、何らかの行為的な表出(acting out)はあっても明確に意識化されないということか。つまり、(以前よりは空洞化しているとはいえ)近代社会(産業社会)的な役割構造に守られることによって、再帰性、自己客体化の要請から(あくまでも相対的であるにすぎないが)逃れられているということ。村上春樹の『国境の南、太陽の西』の主人公は幾分か意識化しているのだろうけど、『ロスト・イン・トランスレーション』のビル・マーレイはどうなのか*1。そういえば、昔は「四十八歳の抵抗」という言葉もあった*2
野獣系でいこう!! (朝日文庫)

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国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

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ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

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ボク自身は、「成熟する」ということが、たとえフィクションであったとしても、まだ今の段階ではそれを「演じる」ことの意味はあるんじゃないか、少なくともそれが必要とされる場面がある思っている[sic.]。だって、何の責任もとれない上司とか、いつまでたっても小娘みたいなおばさんの相手をするのは嫌だよ。
大林宣彦の(伊勢正三の同名の歌をベースにした)『22才の別れ』は、〈断念〉によって〈成熟〉を引き受ける物語。

リバーズ・エッジ

リバーズ・エッジ

さて、岡崎京子リバーズ・エッジ』と『スタンド・バイ・ミー』の対比は興味深い。『リバーズ・エッジ』は初版を読んだのだが、それと「愛蔵版」というのはどう違うの?
成長言説を巡ってはhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080411/1207900427にてよしなしごとを書いていた。

*1:ロスト・イン・トランスレーション』をビル・マーレイの「中年危機」を中心に解釈することについては、例えば湯禎兆『整形日本』(See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070129/1170047831 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070805/1186341960)、p.127ff.を参照されたい。

*2:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081211/1228971729