何処を歩くか?

諸隈美紗稀*1「コロナ禍を経て新シリーズ開拓 『地球の歩き方』編集長 宮田崇さん」『毎日新聞』2022年12月11日


新型コロナウィルスによる準鎖国化、海外旅行の超減少で売上げが最大90%以上減少した『地球の歩き方*2の新機軸について。「1979年創刊の老舗ガイドブックが新型コロナウイルス禍を経て、世界の不思議を取り上げる雑誌『ムー』*3や人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険*4との異色コラボや、世界のカレーや巨像をまとめた『図鑑』シリーズ、日本国内を対象にしたシリーズなどを刊行し」ている。


海外ガイドブックは現在約160の国と地域を対象に、120タイトルが刊行されています。コロナ禍前であれば年間80~90冊を改訂したり、新刊を作ったりするのですが、コロナ禍で海外に行けず、やることがなくなってしまいました。売り上げは通常期と比較して、一番ひどいときで9割超減まで落ち込みました。コロナ禍で軸になったのが、2020年に予定されていた東京五輪に合わせて作製したガイドブック『東京』と『世界244の国と地域』です。この2冊は19年から準備を進め、当初は単発での刊行予定でしたが、感染状況をみながらシリーズ化を決めました。

――当時はどういう気持ちでしたか。

社員やプロダクションに飯を食わせていかないといけないということで、『世界244の国と地域』をはじめとする世界の雑学をまとめた『図鑑』シリーズの拡大や、我々が持っていた『御朱印』シリーズで当面をしのごうとしました。同時に、1年たっても旅が再開しない場合に備えて、アームチェアで旅に思いをはせることができる『旅の名言&絶景』シリーズを作り、一方で旅が再開した時に向けた『旅と健康』シリーズなど新しいシリーズを立ち上げました。旅ではとっさの判断が求められますが、コロナ禍で多くの人は体がなまっていると思います。『旅と健康』はまずは脳みそから鍛えることを想定したシリーズです。


――新しいシリーズはどのようにして生まれたのでしょうか。

社内で大喜利をしたり、社員一人一人が本気で取り組めるテーマを挙げてもらったりしました。この時に成立したのが、世界の不思議を独自の視点でひもとく「ムー説」を基に実際の遺跡やパワースポットを紹介する『ムー ~異世界の歩き方』と漫画『ジョジョ』で物語の舞台となった都市を徹底解説したジョジョ編です。18年に北海道テレビの番組「水曜どうでしょう」とコラボした地球の歩き方を作ることになり、同番組の熱烈なファンだった社員が、「ファンがびびる一冊にしたい」という思いで情報量の豊富な一冊を完成させたところ、高い評価を受けました。その時の「なんでも本気でやると、見る人が見れば評価してくれる」という思いをコロナ禍で思い出し、提案しました。

なお、『地球の歩き方』は2020年11月に、「新型コロナの影響」のため、ブランドごとダイヤモンド・ビッグ社からGakkenに売却されている。