1000本の木

山田孝男*1神宮外苑 危うし」『毎日新聞』2022年2月7日


曰く、


国民の献金・献木・奉仕で造営された明治神宮外苑*2の樹木約1000本が、外苑南側の再開発で切り倒される――と聞いた。
神宮球場秩父宮ラグビー場移転を含む計画の一部で、伐採の説明はない。計画は9日、東京都都市計画審議会にかけられる。都市計画決定がなされれば事業認可へ。公園が3・4ヘクタール減り、運動場は消え、災害避難エリアも縮まる。
イコモス(国際記念物遺跡会議 )日本委員会は7日、伐採中止、計画見直しを都に提言する。

エリアは国立競技場の南側一帯。伊藤忠日本オラクルの本社などを壊し、両社の新社屋を含む超高層の複合ビルが立つ。
(略)
神宮球場、第2球場は統合され、秩父宮ラグビー場と入れ替わる。高層ビルを含め、工期10年。首都自身の脅威が迫るのにこの間、緊急時に競技場を含む公園が使えない。
再開発エリアの古木1900本の52%にあたる1000本を切り、高層ビルの周囲に緑を補う。ビジネス最優先、防災軽視、歴史無視の〈古い資本主義〉であり、公共緑地をあえて創った外苑整備の精神を著しく踏み外している。

切り倒される1000本には、青山通りから聖徳絵画館へ続くイチョウ並木の一部が含まれる。現地を見た。メインストリートではなく、途中、西へ折れてラグビー場バックスタンド席入り口へ至る小並木の18本。ラグビー場は戦前の女子学習院跡地にある。この並木は旧女子学習院正門前のシンボルだった。
絵画館前の、誰でも使える運動場は会員制テニスクラブになり、周辺の林も消える。じつは、新国立競技場建設の際も古木1500本が失われた。当時は代替の新公園を造ったが、今回はそれさえもない。

世間の関心が低い背景は五輪論争疲れ、コロナ疲れもあろうが、なにせ情報が薄い。計画は2015年に浮上した。詳細が都民に示されたのが昨年の12月14日。縦覧期間は2週間。(後略)