「私には縁のない人、接点のない人」(秦郁彦)

山田孝男*1「「日本国紀」をめぐって」『毎日新聞』2019年6月3日


百田尚樹の『日本国紀』*2を巡る騒動について。
秦郁彦*3にインタヴューしている。「「日本国紀」を読んだが、書評を書く気になれなかったという」。


――なぜです?
「新しい情報が一つもないんですよ。だから批評の対象にならない。私には縁のない人、接点のない人という感じがして興味がもてないんですね」
「『ゼロ』っていうのがあったでしょ?」
――「永遠の0」(06年に出た百田の小説。500万部超)ですね。
「あれに違和感を覚えましてね。私は航空戦史をやり(秦は『太平洋戦争航空史話』の著者)、陸軍、海軍の戦闘機パイロットのめぼしい人は全部インタビューしましたが、命を惜しんで立ち回った特攻なんて聞いたことがない」
「永遠の0」は、延命優先で仲間に軽蔑された特攻兵の人間像を追い、再評価する話である。
「あそこに出てくるゼロ戦パイロットは、私からすれば最も遠い人。つくりものという感じがする。労を惜しまず、事実をきっちり詰めていくことが大事だと思うのでね」
また、山田曰く、

「日本国紀」の売れ方は社会現象としては興味深いが、読んでいて気持ちが入らない。私にとっても遠い本だった。