高崎中央銀座(メモ)

都築響一*1「ROADSIDE DIARIES 移動締切日 第24回」『scripta』(紀伊國屋書店)58、pp.6-21、2021


曰く、


高崎*2の(かつての)繁華街の中心は、その名も高崎中央銀座という、駅の西側、徒歩20分ほどにある商店街だった。
1969年に完成した県内初*3の屋根付きアーケードとして、当時は県内一の賑わいを見せていたが、しだいに駅前の大型商業ビルにお客さんを取られ、2014年には大雪でアーケードの一部が崩落という不運とも重なり、いまやレトロと言えばレトロな、典型的シャッター商店街となってしまった。
中央銀座の西側には、かつて「北関東の吉原」と呼ばれたらしい花街・柳川町もある。赤線地帯のおもかげを残す遊郭建築はほとんど残っていないが、狭い路地にひしめくバーやスナック、風俗店の案内所は、寂れた外観にもかかわらず、このエリアがまだ「現役」であることを示している。
シャッター商店街は廃墟とは違って、店は閉めているものの、建物は放棄されずにひとが住んでいるケースがほとんど。それがゴーストタウン未満の半端な気配を漂わせ、かえって寂寥感を増幅しているようだ。
中央銀座エリアには古い映画館も残っていて、そのうち映画ファンによく知られているのが高崎電気館。1913年に開館し、現存の建物は66年に完成。2001年に閉館したが、現在はNPO法人によって運営され、映画のロケ場所になったり、映画祭にも使われている。
商店街にもうひとつ残っているオリオン座は、1926年に誕生(現存の建物は56年)。2003年に閉館したが、解体作業が途中でストップしたまま放棄されていて、あまりに痛々しい。中断の理由は、あるブログによれば地下に川が流れていて、その流れを変えるのが大変だからなのだそう。正面には「ハリー・ポッター」や「ボーン・アイデンティティー」の色褪せた看板がそのまま残っていて、失われた時間の重さを偲ばせる。(pp.7-8)