三途の川は東京都の管轄であるらしいこと

以前、富山県で「遺骨」の「盗難」が相次いでいるという報道があったが*1
『朝日』の記事;


遺灰から貴金属回収、自治体収入に 遺族には知らせず(1/2ページ)
2009年1月13日3時1分



 公営火葬場から出る遺灰に含まれた貴金属を自治体が回収して換金したり、遺灰そのものを売却したりして、一部の自治体が収益を収入に組み入れていることが分かった。名古屋市は年間約1千万円、東京都も約300万円の売却益があった。こうした処理は遺族側には知らされていない。

 火葬し、収骨されたあとの遺灰には歯の治療や人工骨などで使われた金、銀、パラジウムなどの貴金属が含まれている。

 朝日新聞が東京都と政令指定都市など20の自治体に取材したところ、都と名古屋市が遺灰の中から貴金属を回収し、売却していた。新潟、前橋、群馬県高崎の3市は遺灰そのものを業者に売却していた。福岡市は業者が売却した貴金属の収益を市に納めさせることを08年度から始めた。その他の政令指定都市は「回収はしていない」としている。

 東京都では、遺灰を引き取った業者が遺灰を(1)貴金属(2)硬貨(3)残骨灰に選別。金とパラジウムは延べ板、銀はパチンコ玉大の球状にした後、都に納めていた。07年度は金700グラム、パラジウム500グラム、銀1900グラムを回収。都は市況を参考に売却し、約320万円の収益を上げた。また、ひつぎには硬貨も入れられることがあるが、都は07年度、計約9万円の硬貨を回収し、収入に組み入れた。

 炉数46基と国内最大級の火葬場を抱える名古屋市は07年度、金2キロ、銀7キロをはじめプラチナ、パラジウムなど計12キロの貴金属を回収。金属加工会社などに売却し、1019万円の収益を上げた。

 福岡市は、業者が回収した貴金属の売却益を市に納めさせるようにした。07年度の実績だと約340万円の収入になるという。また、前橋、高崎市は遺灰を売却し、07年度に約400万円の収益をそれぞれ得ていた。新潟市は06年度まで売却し、720万円(同年度)の収益があった。
http://www.asahi.com/national/update/0112/TKY200901120227.html

遺灰の所有権をめぐっては、収骨前は遺族の所有、収骨の後は市町村の所有とした1939年の大審院(現在の最高裁)の判決があり、多くの自治体は「遺族が持ち帰らなかった段階で所有権は放棄された」(名古屋市健康福祉局)との立場をとる。遺族側への説明について「時々質問はあるが、こちらから積極的にしていない」(東京都瑞江葬儀所)という。

 貴金属の回収や遺灰の売却が始まった時期は、はっきりとしないが、名古屋市は「記録に残っているのは約20年前から」、都は「かなり以前から」という。「売上金を市町村の雑収入にしている」と明記した戦前の大審院の資料もある。

 回収する理由について同市の担当者は、遺灰は市の財産で業者が売却して利益を得るのは好ましくないとし、「年間約1千万円の収益があり、回収しないともったいない話。市の財源になっている」と話す。

 一方で、貴金属の回収や遺灰の売却をしていない自治体の中には、遺族感情への配慮や所有権の問題などを理由に挙げるところもある。

 北九州市は「人体を換金するのは不遜(ふそん)」と市民から反発の声があがり、91年度以降、売却をやめた。市の要綱で「残灰は遺体の延長で敬虔(けいけん)に処理する」と定めている。神戸市は「財産権もからむので、売却しない」としている。(藤方聡、中村純)
http://www.asahi.com/national/update/0112/TKY200901120227_01.html

棺に入れられるコインは三途の川の渡し賃の筈だが、東京都が回収してしまったら、三途の川を渡れなくなってしまうのでは? 或いは、三途の川は東京都の管轄で、その渡し船は都営ということなのか。
遺体が焼かれると、故人の指輪とか金歯とかはけっこう念入りに探して、骨壺に入れようとするが、それでも漏れてしまうことがけっこうあるんだ。
上の記事を読み、「遺灰の所有権」については戦前に「大審院」の判断が出ていることを知る(勿論、その前提としては、係争状態が存在していたことになる)。また、この「所有権」問題は、臓器移殖とも絡んで、死後の自分の身体の「所有権」問題として、けっこう重要な問題になる可能性があるように思う*2
まあ、「遺灰」というのは土となり、花を養うのがいいとは思う――Where have all the flowers gone?