鷺がやってきた?

先週の(たしか)木曜日の午後、若い男(と私が判断した者)から、電話が固定電話に(当たり前かも知れないが)突然かかってきた。受話器を取ると、その者は自分の名前も告げずにため口でいきなり


ずっと家にいた?


と突然言ってきた。私は何が何だかわからなくなった。こいつは誰なの? 用件は何? それで、


どちら様でしょうか?


と訊いてみた。すると、これには答えず、


え、わからないの?


私は間違え電話なんじゃないかと思って、


どちらにおかけですか?


と訊いた。相手は、


実家にかけてるんだけど。


とぼそっと言った。実家? 全然意味がわからないので、ちょっとラフな口調で、


あんた、誰なの?


と訊いた。すると、相手は、


どうしてそんなに怒ってるの?


と言い、さらに、


今包丁持ってるから、今からあんたを殺しに行く。あと2分か3分で着くからね、待ってな1


と言った。これらの科白、印象的だったのは、特別の興奮もせずに淡々と語られていたということだ*1
ここで、不愉快のリミットが過ぎたので、私は一方的に電話を切ってしまった。少し後に、電話の着信があったけど、私は受話器を取らなかったので、こいつからの電話かどうかはわからない。
それから30分くらい家の中にいたけれど、何も起こらなかった。自宅の周辺を見回しても人影はなかったので、外出した。
夕方になって、息子に変な電話があったよと話をしたら、怖がって、警察に言った方がいいんじゃない? と言ったので、警察に電話して、(思い出せる限りでの)事実を話した。警察の人と話す中で、昼間の不愉快なのに訳がわからない電話の意味がわかってきたように思えた。私の推理によれば、これは特殊詐欺、その中でも古典的な〈オレオレ詐欺*2の未遂だったということになる。もし私が相手のことを何か困り事があって「実家」に電話してきた息子だと信じた素振りを見せたら、今度は本題の詐欺トークに移るというシナリオだったのだろうか。ところが、私のノリが悪くて、詐欺が開始できないので、自棄で、恫喝っぽいトークに切り替えたのだろうか。これは事後的に解釈したことだ。
さて、詐欺だと最初からわかっていたら、最後にかけてやるべき言葉は、


君はどう生きるか?


だったのにね*3