From Asian to Northern

ハフポスト日本版編集部「殺人バチの英語名は「アジア系住民への差別を増幅させる」。ヘイトクライム防止へ名称変更 アメリカ」https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_62e72774e4b0d0ea9b781469


米国昆虫学会(Entomological Society of America=ESA)はVespa mandarinia(和名はオオスズメバチ)の英語名をこれまでのAsian giant hornetからNorthern giant hornetに変更すると発表した*1


オオスズメバチはアジア原産のスズメバチで、日本などアジアの広い範囲に生息する。スズメバチとしては世界最大の種で*2、攻撃性・毒性が共に強いことから「殺人バチ」とも呼称される。2019年にアメリカとカナダの一部地域でも発見され、駆除対象となっている。

このハチはこれまで「アジアン・ジャイアント・ホーネット」という英語名で呼ばれてきたが、アメリカ昆虫学会はこれを「ノーザン・ジャイアント・ホーネット」と改称すると発表した。「ノーザン」には「北方の」という意味がある。

昆虫学会は2021年に名称に関する新しいガイドラインを採択し、人種や民族名を表すものや、恐怖心を煽るものを禁止している。学会は今回の改称についても「アジア系住民への差別やヘイトクライムが増加するなか、害虫の英語名に『アジアン』を用いることは、意図せずして反アジア的な感情を増幅させることにつながる」と説明している。

また学会は、分類学上の観点からも名称変更は適切だと指摘。「スズメバチ属の22種は全てアジア原産か、あるいはアジアに生息しているため『アジアン・ジャイアント・ホーネット』は生態などの固有の情報を伝えるものではない」としている。

さて、Wikipediaに曰く、

スズメバチ」の名は、その大きさが「雀ほどもある」または「巣の模様が雀の模様に似ている」ことに由来する。また、地方によりスズメバチを指して「くまんばち」と呼ばれるため、同じく地方によって「くまんばち」と呼ばれるクマバチ(Carpenter bees) が、しばしばスズメバチと混同されることがある。この両者は分類上も攻撃性も全く異なる。また、「かめばち」(巣の形より)などの名がある。また台湾語では、体と頭部の色のため、「虎頭蜂」と呼ばれている。

インド・ヨーロッパ祖語に由来する語ではスズメバチを意味する単語は共通の語源に由来している。ラテン語の「vespa(ベスパ)」やリトアニア語の「vapsva」を始めとして、オランダ語の「wesp」、ドイツ語の「wespe」、英語の「wasp(ワスプ)」、スペイン語の「avispa(アビスパ)」などはスズメバチを意味する語である。ただし、英称ではスズメバチだけでなく、ジガバチなどを含んだ攻撃的な狩りをするハチ類を指す語である。

英語でスズメバチを指すもう一つの言葉である「hornet(ホーネット)」は中世には「harnette」、「hernet」、古英語では「hyrnet」などと綴られ、ラテン語の「crabro」、「onis」などと関連する。なお、この語もスズメバチ以外にクマバチを指す。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BA%E3%83%A1%E3%83%90%E3%83%81

WASP*3といえば、White Anglo-Saxon Protestantの略だけど、この略語が作られるときに「スズメバチ」が意識されるということはあったのだろうか? 
ところで、beeというのは蜂類一般を指す言葉であってhornetはbeeに包摂されるのだろうか? それとも、hornetはbeeから排除されるのか? toad(ヒキガエル)のことをfrogとは言わないように。ともかく、hornetとbeeでは喚起されるイメージが全然違う。