BGMの話

千葉雅也『デッドライン』*1から。


小学校の頃、夏に家族で茨城や千葉の海へ旅行するときに、車の中ではいつもボブ・ジェームス*2の《Touchdown》を聞いていた。一曲目は何か映画のテーマ曲だったと思う。
ボブ・ジェームスの音楽は一応付―ジョンに分類されるが、要素の融合ぶりに独特の落ち着きのなさがある、バスドラとスネアが絡むグルーヴは心地よくファンキーなのだが、そこには何かぎくしゃくとした感じがある。別の曲をどんどん接ぎ木するみたいに変化していくメロディー。突如として音階を駆け下りるソロが始まるが、その速度には、追手に追われているみたいな不安の影が見えなくもない。
僕は、おそらく友人たちも先生も好みじゃないだろうと予想して、わざとボブ・ジェームスの複雑な曲をかける。こういうのが僕のベースなんですよね、と。(p.116)
Touchdown*3は1978年のアルバム。通しで聴いたことはないけれど、このボールのジャケットはその頃、レコード屋でけっこう見ていた。だって、これは良くも悪くも目立つデザインだよ。「バスドラとスネアが絡むグルーヴは心地よくファンキー」と言われているが、この「グルーヴ」を醸し出しているドラマーは、1曲目の”Angela”であればイドリス・ムハマド、それ以外の局だとスティーヴ・ガッドだろう。
ところで、「僕」が何故か肝心のボブ・ジェームスエレクトリック・ピアノに直接言及していないことが気になった。