自己免疫?

NHKの報道;


統合失調症 “原因の1つは自身の抗体が関わっている可能性”
2022年5月6日 10時29分


統合失調症を発症する原因の1つとして、自身の抗体が関わっている可能性があることをマウスを使った実験でつきとめたと東京医科歯科大学のグループが発表しました。

この研究成果は、東京医科歯科大学の塩飽裕紀 助教などのグループが発表しました*1

統合失調症は、幻覚や妄想などの症状が出る病気で、およそ100人に1人が発症するとされます。

グループでは、統合失調症の患者220人余りを対象に血液などを詳しく調べたところ、およそ5%の患者に脳の神経細胞シナプスにある「NCAM1」と呼ばれるたんぱく質に対する抗体が見つかり、この抗体が脳の情報伝達を妨げている可能性があることをつきとめました。

さらに、この抗体をマウスに投与すると脳のシナプスが減少したり、大きな音に過敏に反応したりするなど統合失調症のような症状が出ることを確認したということです。

グループによりますと、統合失調症の発症にはさまざまな仕組みが関わっているとみられるものの、一部の患者では、この抗体が原因の1つとなっている可能性があるとしています。

塩飽 助教は「抗体によって統合失調症を発症する可能性はこれまで知られておらず、今後、病態の解明や新たな治療戦略の創出につながると期待している」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220506/k10013613201000.html

普通の理解だと、「抗体」というのは細菌やウィルスを初めとする外来の異物に対する防御として形成されるわけだけど、この場合は自己免疫反応*2ということになるのだろうか? 
ところで、統合失調症の妄想というのは、例えば自分の脳内或いは心に盗聴器が仕掛けられて自分の思考が盗まれているというような感じで、自己の内面という閉域が破られているなという感じがあるのだけど*3、それが免疫学的準位で確認されたという感じもする。

石龍徳「NCAM」*4から;


 NCAMは以下のようなさまざまな組織に広く分布している(*は発生期に発現し、成体組織では消失する組織)。:神経組織(神経細胞グリア細胞・シュワン細胞・脳脊髄液)、筋組織(骨格筋*・心筋・平滑筋*)(神経・筋組織は後述)、網膜、コルチ器、嗅上皮、味蕾、歯、表皮、パチニ小体、中腎管、下垂体、傍濾細胞(カルシトニン産生細胞)、膵臓(ラングルハンス島、副腎(皮質・髄質)、卵巣、精巣、ナチュラルキラー(NK)細胞

 長鎖の糖鎖であるポリシアル酸(PSA)で修飾されたPSA-NCAMは、主に発生中の組織で発現している。中枢神経系では、成体になるとほとんどの部位でPSA-NCAMの発現は著しく低下するが、例外的にニューロン新生が続く、前脳側脳室下帯や海馬歯状回顆粒細胞層下帯では、新生ニューロンに強いPSA-NCAMの発現が見られる(図3)。


NCAMが接着活性を示すときには、NCAMどうしが3番目のC2ドメインでホモフィリックに結合するほか、2番目のドメインで細胞外基質のヘパリンなどの分子と結合する(図1)。また、NCAMは、は、同じ細胞膜上の他の接着分子(L1など)やFGF受容体とCis型の相互作用をする。NCAMが細胞内に情報を伝えるときには、Fyn/Srcや、FGF受容体を介することが示唆されている。

 180 kD 分子は、細胞内骨格のスペクトリンと結合していることから、安定な細胞接着を形成すると考えられている。

 5番目のC2ドメインにはポリシアル酸が結合している。シアル酸が負に荷電しているため、長鎖のPSA分子はその大きさと電荷によってNCAM同士又はNCAMと他の接着分子との結合を阻害すると考えられている。この長鎖のPSAは、発達期の神経細胞などに発現しているが、成体になると限られた部位を除き発現がほとんど見られなくなる(図3)。

 NCAMは、細胞-細胞、および細胞-細胞外基質間の接着分子で、神経発生や筋発生に重要な分子である。発生期のNCAMはポリシアル化されているので、発生期のNCAMの機能は、PSA-NCAMを中心に研究されている。神経発生では、細胞移動、神経突起の伸長・束形成・分岐、シナプス形成・可塑性(後述)、学習・記憶、神経疾患に関与する。その他の組織でも形態形成に関与していると考えられている(発現の項を参照)。