「再現」か継承か

『IT Media NEWS』の記事;


松田優作さんを“デジタルヒューマン”として復活させるプロジェクト、東映が発表
3/31(木) 11:23配信


ITmedia NEWS

 東映のツークン研究所は3月31日、新たな映像表現を目指す取り組みの一環として1989年に亡くなった俳優の松田優作さん*1を「デジタルヒューマン」として蘇らせるプロジェクトを発表した。優作さんの妻・松田美由紀さんが監修を務める。

 デジタルヒューマンは、高精細3D CGやモーションキャプチャー音声合成AIなどのテクノロジーを駆使して過去の偉人の姿から動作、声までを再現する取り組み。ツークン研究所は2017年に専門チームを編成し、2019年からデジタルヒューマンの研究開発プロジェクトを進めてきた。

 目的は現在の映像作品に再び登場させること。「唯一無二の名優・松田優作を現代の作品に登場させるべくデジタルヒューマンとして蘇らせる」と説明している。現在はデモ動画を制作中だ。

 松田優作さんの再現に当たっては、全方位に複数の照明とカメラを配置した直径3.5mの球形ドーム型キャプチャーシステム「LightStage」などを活用。複数人の超高精細3D CGデータを元に機械学習を使った顔モデル生成を行うなど、AIによる形状復元を進めている。肌の表現や動きの再現にも新たな解析や推定技術を取り入れた。

 音声の復元は、スマホゲーム「ヘブンバーンズレッド」やアーケードゲームFate / Grand Order Arcade」の制作にも携わったORENDA(東京都港区)が担当。名古屋大学発のベンチャー企業、TARVO(愛知県名古屋市)が開発したAI音声変換技術「Suara」を使って復元に挑戦する。

 最新技術を使って故人を再現する取り組みとしては2019年末の「第70回NHK紅白歌合戦」で歌を披露した“AI美空ひばり”などが知られている*2。当時は故人を懐かしむ人々に歓迎された一方、ネット上では「死者を冒涜(ぼうとく)している」という意見や、表情や動きの硬さから「不気味の谷だ」と指摘する声も上がった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/122c20ce34ae05b0c6d6966c188801e9ae3c9d38

神田敏晶*3のコメント;

モノマネタレントがご本人をモノマネしても不気味ではないが、AIが再現した美空ひばりさんは不気味でしかなかった…。それは本人の声の大量のサンプリング、本人の癖の忠実な再現に終始するからだ。モノマネタレントさんは忠実に再現はしない、かなり誇張したデフォルメが存在している。『デジタルヒューマン』の目指すのは忠実な優作さんではなく、キムタクがモノマネしている優作さんをイメージするとわかりやすいだろう。そのほうが、ボクたちは本人に似ているように見えてくる。本人が言いそうなことをモノマネ芸人のAIフィルターを通してリスペクトしたものにすれば安心して見ることができるだろう。
人類は、DNAレベルで、人類以外のAIやレプリカントらが、自分たちに似てくると、気持ち悪くなるよう高度に見分ける能力をもっているのだ。
私の感想を言うと、「松田優作」をAIを使って「「デジタルヒューマン」として蘇らせる」必要性が全く理解できないのだ。まあ、ゲーム関係の人たちが関わっているということなので、〈松田優作RPG〉でも作るのだろうか? そもそも役者としての松田優作の姿はその出演したフィルムに定着している。永久に封じ込められたといってよい。勿論、死んでしまったのであるから、松田優作の新作を期待することはできない。しかし、遺された映像を観た別の人が松田優作の演技のスタイルを習得して、松田優作を継承していくことはできる。そのようにして習得・継承した松田優作のスタイルを以て、生前松田優作がやらなかったようなキャラクターやストーリーを演じるということはありうる。お能にしても歌舞伎にしても、そもそも藝能における伝統というのはそのようにして構築されていくものなのではないか?

*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20080526/1211736133 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20081116/1226865478 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20081124/1227550595 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100215/1266163857 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20111223/1324580185 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20150224/1424714658 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20151209/1449653787 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160728/1469721302 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160902/1472832572 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170118/1484754883 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/04/18/091737 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/12/23/121457

*2:See eg. https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/01/22/091933 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/03/03/024509

*3:http://www.knn.com/ See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140103/1388727355 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141005/1412531465 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141229/1419856998 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150107/1420655628 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150209/1423495421 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150211/1423618569 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150213/1423756575 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150216/1424016415 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160121/1453383563 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160527/1464314333 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170117/1484667898 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/03/09/012336 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/07/09/102406