「神話表現」としての土偶

中島岳志*1「植物を象徴 「縄文脳」になって発見」『毎日新聞』2021年5月15日


竹倉史人『土偶を読む』の書評。


著者は、人類学の知見をもとにアプローチし、土偶を神話表現の一様式として考察する。強いインスピレーションを与えたのは、フレイザーの『金枝篇*2。世界中の神話や儀礼、呪術の読み解きが展開されているが、ここで重視されるのが植物に宿る精霊の存在である。これを土台に、著者は土偶を食用植物の姿をかたどったフィギュアと捉える見方を提示する。土偶は植物の人体化であり、植物霊祭祀に使用されたものだというのだ。

著者は「縄文脳」をインストールするために、各地の山や海を駆けめぐる。そして、イコノロジー(図像解釈学)研究と考古学をかけ合わせることで、具体的な土偶のなぞ解きを展開する。このプロセスは、大胆かつスリリングで、評者は興奮しながら一気に読んだ。