「パトリオティズム」(メモ)

中島岳志*1「批判的まなざしこそ必要」『毎日新聞』2019年11月24日


将基面貴巳『日本国民のための愛国の教科書』の書評。
少しメモ。


パトリオティズム古代ローマ由来の思想で、共和政的な政治的価値や制度を護ろうとする態度を指す。そこで重視されるのは共和主義的な「共通善」であり、その価値を犯そうとする「暴政」を敵と見なした。そのため、愛国者は多くの場合、反体制派に属し、抑圧的な支配者から「共通善」を守ろうとした。
一方、ナショナリズムはネイション(国民、民族)の独自性にこだわる思想で、自国の自然や文化、言語、民族への愛着を基盤とする。ナショナリストが重視するのは、同じ文化共同体への忠誠心であり、フランス革命以降に民衆に広まった。
この両者は、フランス革命をきっかけに重なり合い、「共和主義的パトリオティズム」とは別に「ナショナリズムパトリオティズム」が生まれた。これが新しい「愛国」の形であり、日本語の「愛国」は「ナショナリズムパトリオティズム」に還元されている。
将基面貴巳氏は中公新書から、『言論抑圧 矢内原事件の構図』を上梓しているのか。