原因を探して

承前*1

「PISA調査 日本の読解力低迷 、読書習慣の減少も影響か」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191203-00000565-san-soci


何故PISA特に「読解力」の得点や順位が下がっているのかを探る記事。
先ずは産経新聞


文科省によれば、小6と中3を対象に毎年実施している全国学力テストなどでは、特に学力低下の傾向はみられないといい、同省担当者は「今回のPISAで読解力がなぜ低下しているのか要因を特定するのは難しい」と話す。

 考えられる一つは、15年から導入されたパソコンを使ったテスト形式に不慣れなこと。日本の生徒は紙の筆記テストに慣れ、ポイントとなる部分に線を引くなどして思考を深める傾向があるため、パソコンではそれができず、戸惑うケースが多かったとみられる。

 また、インターネットのサイトから必要な情報を探し出したり、情報の信憑性を見極めて対処法などを自由に記述させたりする問題の正答率が低かった。日本では選択式問題のテストが多く、記述式が苦手な生徒が多いと指摘されてきたが、PISAでもそれが浮き彫りになった格好だ。

 また、読書習慣のある生徒の方が平均点が高いことも分かった。小説などを月数回以上読む生徒の平均点は531点で、読まない生徒より45点高かった。新聞を同頻度で読む生徒の平均点も、そうでない生徒より33点高かった。

引用した部分の最後のセンテンスを見ると、産経新聞ステマじゃないかと思ってしまう人もいるかも知れないけど、効果という点では「新聞」よりも「読書」の方が強い。


おおたとしまさ「日本の子どもの「読解力」8位から15位に急落――“PISAショック”をどう読み解く?」https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191206-00016944-bunshun-soci


こちらの方はPISAそのものの価値を疑うというより根本的なスタンスを取っている。
2003年のPISAで日本の順位が急落したことを承けて、「ゆとり教育*2への「疑念が噴出した」。しかし、


なんとも皮肉なのは、今回PISAを受験した子どもたちが実は小1から中3まで「脱ゆとり」教育を受けた1期生だということである。「PISAショック」から生まれたカリキュラムを受けた子どもたちが新たな「PISAショック」の当事者になってしまったわけだ。

もちろんPISAとは国の教育力を競う大会ではなく、順位の変動自体には本質的な意味はない。数値に有意な変動があるならば、その背景を探り、新たな打ち手を見つけることにこそ意味がある。またそもそも経済協力開発機構OECD)は経済の観点から教育を評価しており、その学力観が絶対的ともいえない。
PISAがいう「読解力」が日本の国語教育における「読解力」とはニュアンスの違うものである」。その定義は、

 <読解力の定義>

 自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと。

 <測定する能力>

(1)情報を探し出す
 -テキスト中の情報にアクセスし、取り出す
 -関連するテキストを探索し、選び出す
(2)理解する
 -字句の意味を理解する
 -統合し、推論を創出する
(3)評価し、熟考する
 -質と信ぴょう性を評価する
 -内容と形式について熟考する
 -矛盾を見つけて対処する

ということになる。そして、「「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」の2項目は、今回の調査で新たに追加された要素で、まさにこの点において日本の子どもたちの正答率が低かった」。
PISAは「文章を情報として論理的に評価・分析する力」を重視しているのだが、おおた氏は「「文学など読まないで、もっと実用的な内容の書籍や新聞を読ませるべきだ」とはならない」といい、来年度から高校に導入される「論理国語」*3の妥当性も問題にしている。

1つめの理由。PISAの指標は文化に依存しない最大公約数的な「リーディング・リテラシー」を経済的な有用性の観点から評価するためのものであり、その評価基準に過剰適応すれば、それぞれの国や地域の文化に根ざした「国語教育」の目的が損なわれる可能性が高い。

 2つめの理由。小説などフィクションを読む子どもの「読解力」の平均点は531点で、読まない子どもより45点高かった。同様に新聞を読むグループとそうでないグループの得点差は33点だった。つまり、「新聞を読むか読まないか」よりも「小説を読むか読まないか」という要因のほうが、平均得点の差が大きい。文学鑑賞と論理的な読解力は、単純に切り離せるものではなさそうなのだ。

また、そもそも

 PISAが設ける指標に基づいて日本の子どもたちの弱点を見出し、打ち手を講じることはもちろん大切だ。しかし一方で、仮にPISAの考える「読解力(リーディング・リテラシー)」で世界最高の成績をおさめたからといって、日本人としての国語力が優れていることにはならない。そこを混同してはいけない。
また、


奥山直美「PISA2018、読解力15位に低下…情報を探し出す力など課題」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191204-00000006-resemom-life


曰く、


生徒質問調査の結果によると、日本の生徒は「読書は大好きな趣味のひとつだ」と答える生徒の割合が45.2%と、OECD平均の33.7%より高いなど、読書を肯定的にとらえる傾向があり、そのような生徒ほど読解力が高い傾向にあった。OECD平均と比較すると、日本はコミック(マンガ)やフィクションを読む生徒の割合が多かった。

 日本を含むOECD全体の傾向として、読書を肯定的にとらえる生徒や本を読む頻度が高い生徒のほうが、読解力の得点は高かった。中でもフィクション、ノンフィクション、新聞をよく読む生徒の読解力が高い傾向にあった。日本に限ると、新聞、フィクション、ノンフィクション、コミックのいずれも、よく読む生徒の読解力の得点が高かった。

また、

このほか、読解力の平均得点は、調査参加国すべてにおいて女子が男子より得点が高く、その差は統計的に有意であった。日本は、男子493点に対し、女子が21点高い514点で、男女差は小さいほうから9番目であった。