茶髪裁判

朝日新聞』の記事;


「黒染め強要で不登校」生まれつき茶髪の女子高生が提訴
2017年10月27日11時33分


 生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう教諭らから何度も指導され精神的な苦痛を受けたとして、大阪府立高校3年の女子生徒が、府に約220万円の賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。27日に第1回口頭弁論があり、府は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

 訴状によると、生徒の母親は2015年4月の入学時、生徒の髪が生まれつき茶色いことを学校側に説明。黒染めを強要しないよう求めた。しかし教諭らは、染色や脱色を禁じる「生徒心得」を理由に、黒く染めるよう指導した。「生来的に金髪の外国人留学生でも、規則では黒染めをさせることになる」とも述べたという。

 生徒は黒染めに応じていたが、色が戻るたびに染め直すよう指示され、2年次の16年9月には黒染めが不十分だとして授業への出席を禁じられた。翌10月の修学旅行への参加も認められず、現在も不登校が続いているという。

 生徒側は、「黒染めで頭皮や頭髪に健康被害が生じた。身体的特徴を否定され精神的苦痛も受けた」と主張。「高校には生徒が健全に発育できる環境を作る義務がある」としたうえで、今回の指導はそれに反する「違法な指導だ」と訴えている。大阪府教育庁朝日新聞の取材に「事実関係も含め、係争中なので答えられない」とした。

 高校生の頭髪をめぐっては、色を染めたりパーマをかけたりしていないか見分けるための「地毛証明書」を、東京都立高校の多くが一部の生徒に提出させていることが明らかになっている。府教育庁によると、府立高校で同様の仕組みがあるか否かは「把握していない」という。
http://www.asahi.com/articles/ASKBS6D22KBSPTIL024.html

籏智広太*1「「茶髪で生まれたら普通じゃないの?」 黒染めを強要された女子高生の想い」https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/kurozome-kyoyo


原告になったのとは別の女子高生へのインタヴュー。


「茶髪で生まれてきた私が、普通じゃないと言われているように感じて。本当に、涙が出るほど悔しかったです」

BuzzFeed Newsの取材にそう話すのは、大阪府内の公立高校に通う女子生徒(3年)だ。祖父がアメリカ人で、生まれつき、髪の毛が茶色い。

この女子生徒は、中学1年生のころ、担任から黒染めの強要を受けたことがある。入学当日のことだ。いまでもはっきりと覚えている。

「保護者やクラスメイトの前で、担任の先生から教室の前に呼び出され、髪色の注意を受けました。母は『私の父がアメリカ人なので娘は4分の1、つまりクォーターです。生まれつきの髪色です』と説明しました」

「すると担任の先生に、『どこの血が入っていようが、なに人であろうが関係ない。これは市の決まり。普通は黒髪で生まれてくる。髪を染めてもらわなければ学校に来ては困る』と言われたんです」

母親は教育委員会に足を運び、対応を依頼したが、その後も担任の態度は変わらなかった。別室や廊下に呼び出される日々が続いた。

「見世物みたいに教師たちに囲まれ、髪をかき分けられながら根元も調べられました。まるで不良少女扱いです。悔しくて、仕方がなかった」


同じクラスには、アメリカ人と日本人の親を持つ生徒がいた。担任はその生徒の髪色に言及しながら、「ハーフが黒髪に近いのになぜ、クォーターのあなたの髪がこんなに赤いのか」とも注意をしたという。

さらには「高校進学や行事参加も諦めろ」とまで言われ、「我慢の限界」を感じた女子生徒は、母親とともに、再び教育委員会に訪れた。

教育委員会からは、「そのような決まりはない」との説明を受けた。すぐに学校側に連絡が行き、学年主任らから謝罪も受けたという。

その後、担任から幼少期の写真を持ってくるよう求められ、数枚を提出すると「やっと地毛だということが認められた」。それからは同じような強要を受けることはなくなった。


「私が、黒染め強要を差別だと感じる理由は、生まれ持ったものを無理矢理変えなければいけないということです。髪色を好き好んで生まれてきたわけでもないのに、髪色のせいで人格まで否定されたり、なぜここまで地毛のせいで辛い思いをしなければならないのかと、疑問に思います」

いま通っている高校では、事前に髪色が黒ではないことやパーマであることを示す「地毛登録」をしており、黒染めの強要を受けたことはないそうだ。

同じような問題をなくすために、どんなことを教育関係者に知ってもらいたいのか。そう聞くと、女子生徒は言葉に力を込めた。

「人はみんな、持っているものがそれぞれ違うということです。肌の色も目の色も髪の色も、それぞれ違います。髪色一つで人格まで否定されるような社会は間違っています」

まあ、これはひどいと一言言えば足りる。記事を読むと、少なくとも大阪市大阪府の準位では、「茶髪」それ自体を禁止するという規則はないようだ。もし存在したら、一挙に制度的レイシズムとして国連で議論すべき問題ということになってしまうだろう。問題は、現場(校長や教師)の暴走、教育委員会のレヴェルでの黙認ということになるのだろうか。
統制の対象としての「茶髪」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060929/1159532653 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060930/1159586613 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090317/1237222621 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091022/1256186586 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100213/1266069745も。