「男の帝国」

書物のエスプリ

書物のエスプリ

山田登世子「デフォー『ロビンソン・クルーソー』」(in 『書物のエスプリ』*1、pp.86-87)


ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー*2を巡って。


それにしても、ロビンソンというこの「単身者」は生きるのに少しも女(母)を必要としない。彼は海から生まれ、息子のフライデーもまた海から授かる。資本主義の勤勉の島は、女をしめだした「男の帝国」なのだ。この長大な冒険小説が実に「女っけのない」小説であるという事実は、勃興期の資本主義がいかに男性中心の社会であり、その申し子たる小説がいかにマッチョなジャンルであるのか、あらためて教えてくれる。(p.87)
ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)

ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)

ロビンソン・クルーソー〈下〉 (岩波文庫 赤 208-2)

ロビンソン・クルーソー〈下〉 (岩波文庫 赤 208-2)