Maxine Hong Kingston『チャイナ・メン』

チャイナ・メン (新潮文庫)

チャイナ・メン (新潮文庫)

今月初旬にマクシーン・ホン・キングストンの『チャイナ・メン』(藤本和子訳)*1を読了。


発見について
父たちについて
中国からやってきた父のこと
死霊の愛
檀香山の曽祖父
死について
ふたたび死について
シェラネヴァダ山脈の祖父
関係法
アラスカ・チャイナ・メン
アメリカ人がふえてゆく
グリーン・スワンプの沼男
羅賓遜の冒険
アメリカの父
離騒――悲歌
ヴェトナムの弟
百歳の男
聴く


沈黙に声をひろう――訳者あとがき
【解説セッション】共同体から受け継ぐナラティヴ(村上春樹柴田元幸

些か乱暴ではあるけど、本書を民話集+回想録と形容することは許されるだろう。「父たちについて」と、「父」が複数形で使われていることに注意されたい。著者及びその家族のことが直接語られているのは、「アメリカの父」と「ヴェトナムの弟」。「関係法」は米国の対中国人移民政策についての客観的な歴史記述。「羅賓遜の冒険」は「羅賓遜」すなわち「ロビンソン・クルーソー」の話。著者の家にはデフォーの『ロビンソン・クルーソー*2の中訳本があった(p.370)。「離騒――悲歌」は「離騒」及び屈原について。
ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)

ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)

ロビンソン・クルーソー〈下〉 (岩波文庫 赤 208-2)

ロビンソン・クルーソー〈下〉 (岩波文庫 赤 208-2)

楚辭―譯註 (岩波文庫 赤 1-1)

楚辭―譯註 (岩波文庫 赤 1-1)

『チャイナ・メン』というタイトルについて。村上氏と柴田氏の対談から;

柴田 内容に踏み込んでいきますが、このChina Menというタイトルにキングストンのメッセージが込められていると思います。通常はChinamenと一語で綴りますが、チンク(Chink)やジャップ(Jap)という言葉ほどではないにせよ、蔑称のニュアンスが強い言葉です。
村上 「支那人」みたいなニュアンスでしょうか。
柴田 おっしゃる通りです。そのChinamenという言葉を、China Menと二語に分けているわけです。Woman Warrierという、もうひとつの二語とのバランスということはもちろんあるでしょうけれども、それとは別に、白人が押しつけてくるステレオタイプなイメージとは別のものを提出しようという意図があるように思います。それがタイトルに現れているし、内容にも通底しています。(p.544)
北米に移民した中国人(広東人)の記録として、デニス・チョン『チャイナタウンの女』*3もマークしておく。北米といっても、彼女の場合、米国ではなくカナダではあるが。
チャイナタウンの女 (文春文庫)

チャイナタウンの女 (文春文庫)