『紅白』について、どなたかが書いている;
サザンは「紅白」というか「合戦」を超越していたわけだ。
紅白は、予想よりカオスで。それは祝祭として、いい加減な部分とまじめな部分とうまくブレンドされていたからだと思う。基準を決めて、歌ですらこれがベストと選べないぐらい、価値観は多様化している。それはそれでいいじゃないのと。最後のサザンを、男女、赤白と分けずにおいたのは良かったと思った。
もう、勝ち負けの集計は、とっくに形だけになっているから、男女入り混じって大きな声で歌えばいいよと。
「なんだか幸せだよ」という司会の内村の言葉通り、私も幸せになった。
ところで、「平成最後」の「紅白」と銘打ちながら、このサザンもそうだけど、私にとって、強く印象に残ったのは「平成」ではなく「昭和」だったのだ。サザンもそうだけど、松任谷由実*1、松田聖子*2。また、復活した北島三郎*3。これらの人びとはやはり昭和の人といえるだろう。でも、それは視ていた私が昭和の人だったからにすぎないのだろうか。「昭和」を知らない世代の人に対しては、また別のゲシュタルトが現象していた筈だ。
さて、
石黒隆之「紅白で魅せたユーミン。もう生歌がきつい現実と、名曲を誰が歌い継げるか問題」https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190101-01540471-sspa-soci
曰く、
しかし、「率直に言って、ユーミンはもう自作曲を歌える状態にない」、「ユーミンの楽曲が健全に保護、伝承されるために、今からふさわしい歌い手を探したほうがいいのではないか」という。しかし、「ユーミン」を歌える歌手を探すのは困難である;
披露した「ひこうき雲」*4と「やさしさに包まれたなら」、いずれも品の良さと親しみやすさが絶妙なバランスで両立している。言ってみれば、音楽としてのたたずまいが清々しいのである。作曲的に高度な試みをするとか、凝った歌詞を書くとかではなく、普段の生活から気を張っていなければ出せない気高さや、普遍的な美徳がある。改めて、得難い資質の持ち主だと感じた。
そう言うと、“若くて歌の上手い人はいくらでもいるだろう”と思われるかもしれないが、ユーミンの楽曲は、そのような体力自慢の手にかかると一気に魅力が失われてしまうから難しい。音程が正確だとか、声が元気だとか以上に、書の“かすれ”のような美しい欠損を嗅ぎ取る感性が求められるからである。
そこで考えたいのが、2014年にグラミー賞のイベントでキャロル・キング(76)の「君の友だち」をカバーしたレディ・ガガ(32)のケースだ。ボーカリストとしてのガガは、体力的にキャロル・キングを上回っているために、正攻法では原曲のたどたどしさが再現できなくなる。だから、ガガは歌のフレージングによって自ら破損を作り出したのだ。みずみずしい声や豊かな音域にフタをするように、歌詞を投げつける。歌い上げたくなる気持ちや、オリジナリティを加えたくなる下心を自制して、語りに重心を置いたことで、キャロル・キング特有の親密さが保たれたというわけだ。
この種の大局的な判断を下す力は、音楽のことばかり考えていて身につくものではない。やはり、普遍的な美徳を信じるかどうかの問題なのである。現状、日本の音楽シーンを見渡して、そこまで懐の深いシンガーはいるだろうか?
ユーミン×スタジオジブリ ひこうき雲 40周年記念盤 (CD+DVD)(完全生産限定盤)(LPサイズ絵本仕様)
- アーティスト: 荒井由実
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*4:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180523/1527094826