「なにが悲しくて」

藤森照信*1「大人の洞穴、茶室」『くらし中心』(「くらしの良品研究所」)20*2、pp.12-13


藤森氏が設計した茶室「矩庵」を巡って;


生えているように見える木は栗で、私の故郷、長野県茅野市の山から伐り出したものです。想像を絶する重量で、半分くらいに削りました。躙り口への梯子も同じ栗で、二股のものを真ん中で半分に割って梯子に仕立てています。栗は私自身とても好きなんです。まずかたちがいいし、腐らないのもいい。適当に曲がっているのもいいところ。針葉樹があまり好きじゃないんです。杉、松、檜、みんなまっすぐすぎるし、木目もきれいすぎます。木の原形である針葉樹からすれば、広葉樹はなにが悲しくてこんなにクネクネしているんだって話ですけどね。(p.12)