錬油術

大阪市で「人工石油」実験なるものが行われたのは今年の1月のことだったか;


大阪市環境局環境施策部環境施策課、大阪市経済戦略局産業振興部イノベーション課「報道発表資料 水と大気中のCO2等から生成する人工石油(合成燃料)を活用した実証実験を支援します」https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kankyo/0000588170.html
大阪市環境局環境施策部環境施策課環境施策グループ「水と大気中のCO2等から生成する人工石油(合成燃料)を活用した実証実験について」https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000588970.html


2番目のテクストは「実証実験」後に作成されたもので、最終的な更新は11月28日。
ただ、そのFUCKもといFAQによれば、


 Q1 実証実験の結果について教えてください
A 本市及び推進チームは、実証結果の検証や評価等を行う立場にはありません。大阪商工会議所のホームページ「先端技術を活用した実証実験を検討されている方は、ぜひ大阪へいらっしゃい!別ウィンドウで開く」*1の「これまでに実施した実証事業の2022年度の支援実績」に実証実験の概要が記載されておりますのでご確認ください。
 実証実験の結果等に関する詳細な内容のお問合せにつきましては、実験実施主体である事業者(サステイナブルエネルギー開発株式会社別ウィンドウで開く)*2に直接お問い合わせ下さい。
 なお、本市及び推進チームは、フィールドの提供という面で支援を行ったものですが、実証の内容には関わっておらず、資金面での支援も行っておりません。


Q2 現在の進捗状況について教えてください
A 本市では把握しておりません。実験実施主体である事業者(サステイナブルエネルギー開発株式会社別ウィンドウで開く)に直接お問い合わせ下さい。

その後の情況がどうなっているのか、いまいち全然わからないのだった。もうみんな興味がないのか。「大阪ワクチン」とか「イソジン*3とかのように。
さて、

左巻健男*4「インチキ、トンデモ技術 水が油になる!水と二酸化炭素が油になる!」https://samakita.hatenablog.com/entry/2023/12/12/131450


大阪市の「公開実験」を踏まえて。


その後も幾たびも同様の事*5がくり返されてきた。
 中でもわが国では「水を油(燃料)に変える技術」、「廃棄物(プラスチック)を油に変える技術」が。

 ぼくが追っていた「水を燃料に 倉田式油化還元装置 関西アーバン銀行 20億円を融資、投資」。 これは2004年のことだが、90年代の終わり頃、当時のパソコン通信ニフティサーブで日本化学会運営の「化学の広場」(ぼくはスタッフの1人)で倉田大嗣氏の公開実験が大きな話題になった。

 倉田氏の公開実験や書籍が「水を油(燃料)に変える技術」、「廃棄物(プラスチック)を油に変える技術」だった。

 常温核融合との違いは初めから論文にしないで公開実験と書籍で発表したことだ。
 しかるべき機関も調査したがブラックボックス部分があり解明できないで終わった。
 倉田氏は自分の技術のもとは「波動」と「酵素」と。
 この波動はもちろんまともな物理学的なものではなくスピ系のバイブレーション。
 オカルト・ニセ科学はこの種の「波動」が大好き!
酵素」「触媒」「磁石」も科学無知な素人を騙すのによく使われる。

 自治体の中には倉田氏の装置で廃棄物処理をしたところもあった。その自治体の廃棄物が山中に捨てられていたという情報もあった。
 倉田氏の装置の公開実験を見て信じて著書に紹介した有名化学教育者も出た。
 パソ通ニフティサーブFCHEMの化学者・化学技術者・化学教育者は活発に議論。もちろん否定的に。

 だからこそ倉田氏の「水を燃やす技術に関西アーバン銀行が20億円を融資、投資」というニュースは驚きだった。自治体だけではなく銀行も軽く騙されるのかと。
 その後どうなったかはわからない。関西アーバン銀行もなくなった(吸収合併)。ただし、投資の20億は回収できなかっただろう。

 倉田氏はその後行方不明になったからだ。
 もちろん、インチキ技術を肯定する側はこれを「奇跡の発明をした者は全員行方不明」とし、既存利権から消されたかのような主張をする。
 その後も同様な公開実験は続いた。水は燃える(船瀬俊介氏支持)→ぼくから見ると水を電解して水素を燃焼。
 水が自動車のエンジン燃料→ぼくから見ると、水を分解する物質使用(Mgあたりか)。

 そして今回の大阪市の公開実験。
 理屈上、水とCO2からエネルギーと触媒をうまく使えば油ができる。
 そのような人工光合成の研究はいくつか既に科学的な裏付けをもって進められている(NEDO)。

 大阪市は先ずちゃんとした第三者の複数機関に追試をさせるべきだった。今のやり方は当のマジシャンにマジックをさせているようなもの。
 倉田氏の事例などから、まず本当に水とCO2から油ができているかどうか、装置にブラックボックス的で闇の部分はないかを追究して欲しい。

「大阪、イソジンと大阪ワクチンでは飽き足らず夢の人工石油に手を出す」https://kabumatome.doorblog.jp/archives/66004250.html


これは「公開実験」直後の懐疑的な反応集。
さて、


RAPT*6「【大阪】水と二酸化炭素から『人口石油』を生成する実証実験開始 1リットルあたり10円から14円」https://rapt-plusalpha.com/65481/


こういう人が信じていること「人口石油」(sic.)については眉に唾を付けるべきであることの証左ではないかとも思うのだけど、さらに凄いことを言っている。石油は「化石燃料」ではないんだって!
大阪市では是非〈透明な服〉の「公開実験」をやってもらいたいよ。