「マジックテープ」の起源

村井貴幸*1「千葉県の外来種 オオオナモミ」『生命のにぎわいとつながり』(千葉県生物多様性センター)79、p.4、2023


曰く、


オオオナモミXanthium orientale subsp. orientale)は、北アメリカ原産で、耕作放棄地や河川敷など比較的栄養が豊富で開けた場所に生育するキク科の一年生草本です。国内では1929年に岡山県で初めて見つかり、その後全国に拡大しました。在来の草本植物との競合や家畜などへの影響から、国の「生態系被害防止外来種リスト」では、その他の総合対策外来種、また「千葉県の外来生物リスト2020年改訂版」では、影響度B、緊急度Bとして掲載されています。

本種はいわゆる「くっつきむし(ひっつきむし)」と呼ばれる果実を持つ植物の1種です。みなさんも藪を歩いているうちに、いつの間にか植物の実が衣服にくっついていた、という経験をお持ちではないでしょうか。くっつきむしは、果実の表面にフックや逆さトゲ、粘液などを持っており、動物の毛や人間の衣服などにくっつくことで、種子を遠くへ運んでもらい分布拡大するという戦略をとっています。本種の場合は、果実の表面に生えているトゲの先端が少し曲がってフック状になっており、それによって動物の毛などに引っかかることができるようになっています(略)このフック状の構造から着想を得たものが、私たちの身近なところでも使われています。それが、マジックテープ®の名称でおなじみの面ファスナーです。強力な接着力がありながらも、何度も着脱できる便利さから、現在では衣服などを中心に様々なところで使われています。このように、生き物の体型や機能などから着想を得て、ものづくりなどに活かす技術のことを生物模倣(バイオミメティクス)と呼んでいます。