一般と個別

承前*1

Business Journal編集部「宮台真司さん襲撃犯も宗教2世…エホバの証人、子どもを鞭打ち・排斥、妊娠を断念」https://biz-journal.jp/2023/02/post_332614.html


自殺した宮台真司襲撃容疑者の母親はイェホヴァの証人*2の信者であるという。但し、本人は信者ではない。
さて、記事の大半は小川寛大氏*3の協力によるイェホヴァの証人問題解説に費やされている。その解説は妥当なものなのだけど、記事のタイトルに「 エホバの証人、子どもを鞭打ち・排斥、妊娠を断念」というフレーズを入れることは妥当ではない。先ず、そもそも襲撃犯とその母親の関係がどうだったのかということも、彼がイェホヴァの証人に対してどのような感情や見解を持っていたのかということも明らかではない。宮台襲撃とイェホヴァの証人が関係があるのか否かということなんて、(少なくとも現段階では)わからないというのは当然だ。イェホヴァの証人の教義や宗教生活という一般的な問題と、この男との生活史や人格形成といった個別的問題とは自動的に連結されるわけではない。論としては、生活史や人格形成にイェホヴァの証人がどの程度、またどのようなかたちで重要性を持っていたのかを慎重に再構築していくしかないだろう。しかしながら、このような煽ったタイトルは、記事の本文も読まずに煽りだけでわかったつもりになるような人たちも含めて、犯人を「エホバ」とか〈カルト〉といったタグ付けをし、そのことによって、所謂善良な小市民に対して、フリーク・ショー的な快楽を与えるか、歩いはやっぱり〈カルト〉みたいな〈異常〉な人による〈異常〉な出来事だったのだと、〈異常〉な事件によって揺さぶられてしまった日常世界を修復するというような効果しかないだろう。