日本最古?

先日、『ブラタモリ』で「対馬」を取り上げていた。「対馬」というのは既にあの≪魏志倭人伝*1にも出てくる。思うに、〈邪馬台国〉に関して、かなり好き勝手なトンデモも含めて、これだけ多くの諸説が流通している一因は、≪魏志倭人伝≫にある地名が殆ど現存していないことであるといえるだろう。≪倭人伝≫の中の現存していない地名を現存するどんな地名に当て嵌めるかということで、かなりのヴァリエーションが生まれる。しかしながら、「対馬」は「対馬」のまま。もしかして、現存する日本最古の地名なのでは?ところで、≪魏志倭人伝≫の時代、日本社会はまだ無文字社会だった。ということは、「対馬」という文字列は中国人の報告者が勝手に考えたものであり、現地人にとってはそんなの知らないよ、ということになる。さて、中国人が外国の地名を漢字表記する仕方として、2つのやり方が考えられる。現地語の漢字音訳と現地語の(中国語への)意訳。前者の例としては、


England 英格蘭


後者の例としては、


Iceland 冰島


がある。では、「対馬」は如何に? 「対」という漢字の呉音と漢音はタイ。ツイというのは唐音である。とすると、≪魏志倭人伝≫の筆者たちは「対馬」をタイマに近い仕方で発音していたわけだ。現代中国語(マンダリン)では(唐音にやや近い)duimaになる。なお、『古事記』では「対馬」は「津島」と表記されているらしい。これは(大和言葉として)ストレートにツシマと念むことができる。古代において、この島の名前は、「対馬」という漢字以前にツシマと呼ばれていた可能性が高いわけだけど、それと「対馬」という漢字との関係は如何なるものだったのだろうか。ツシマとは別に、ペアの馬に近い意味の現地人の地名があって、やってきた中国人は、それを意訳して「対馬」という地名を作ったのだろうか? それとも、その当時、後の唐音に近い発音をする方言が既にあって、その話者が、ツシマをツイマに近い仕方で音訳し、「対馬」という漢字を宛てたのだろうか? さてさて?
ところで、「対馬」でずっと気になっていたのは「対馬」という苗字。何故か、青森県津軽)に多いような気がしていた。津軽では(太宰治*2の実家でもある)「津島」もかなりの勢力を持っている苗字であるように思うが、『古事記』における表記のことを勘案すれば、「対馬」と「津島」は互換的であると考えられるだろう。Wikipediaによれば、各地の「対馬」「津島」という苗字に関しては、複数の系譜があるらしい。その中で、


陸奥国北部の對馬、対馬、津島の各氏の出自は各種言い伝えられている。青森県旧岩木町史[要文献特定詳細情報]に壇ノ浦で敗れた平氏の一族が対馬国に逃れ、後、。蒙古襲来を避けて日本海を北上し、津軽深浦に漂着し、安東氏の計らいで津軽に根付いたという説。小説家・太宰治(本名は津島修治)はこの末裔。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BE%E9%A6%AC%E6%B0%8F

*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170927/1506485685 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/01/23/112933 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/09/07/025329 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/09/03/135105

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060419/1145420582 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070817/1187353541 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081022/1224643930 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090227/1235701965 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090320/1237517181 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090615/1244995286 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100524/1274722382 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101126/1290795234 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101202/1291303953 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110813/1313208109 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130425/1366912936 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130806/1375806909 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131218/1387381317 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160211/1455165849 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160219/1455889412 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170301/1488374193 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170406/1491451136 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170420/1492658825 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170820/1503238987 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180529/1527614637 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/03/03/004852 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/06/20/002830 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/10/04/015612 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/11/18/103700 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/12/04/130338 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/01/14/102841 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/02/03/125716 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/12/07/082948 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2022/06/24/224609