- 作者:坂口 安吾
- 発売日: 2019/05/29
- メディア: 文庫
ちょっと前に読了した坂口安吾『不良少年とキリスト』*1の目次を備忘のために写しておく。
この文庫版は、1949年に刊行されたオリジナル版から、「戦争論」と「太宰治情死考」を除き、掌編小説「復員」と2本の座談会(「現代小説を語る」と「歓楽極まりて哀情多し」)を加えたもの。
復員*
恋愛論
欲望について――プレヴォとラクロ
二合五勺に関する愛国的考察
詐欺の性格
ヤミ論語
敬語論
呉清源論*
座談会 現代小説を語る
(坂口安吾、太宰治、織田作之助、平野謙)
座談会 歓楽極まりて哀情多し
(太宰治、坂口安吾、織田作之助)*
大阪の反逆――織田作之助の死
不良少年とキリスト【追悼 太宰治】
口絵の写真について(林義勝)
解説(荻野アンナ)
さて、「無頼」とか破滅的生活といったことを期待して、この本を読んだ人は肩透かしを食ってしまうかも知れない。ここで安吾が醸し出しているのは、寧ろ常識とか保守といった匂いである。 荻野アンナさん*2は次のように突っ込んでいる;
「安吾さんは、本質的には修行僧なのですが、通俗を恐れず世俗にまみれる覚悟をお持ちです。三面記事を扱って、三面記事と一緒に時代に忘れられることを恐れていない。その点、面白いのが『ヤミ論語』です。焼け跡闇市の殺伐とした世相が反映されていることで、史料的な価値があります。その上で安吾さんの古さと新しさ、両方を読み解くことができる」
「僕のどこが古いんだい?」
「『男女同権』という項目です。宴会の席で『オサンドン』をやらされた女性が、今でいうセクハラを訴えたそうです。安吾さんは宴席で『すすんで』お酌をする女流作家連を引き合いに出して、行き過ぎた男女平等をたしなめています。今なら安吾さんのほうがセクハラ扱いされちゃいますよ」
「君こそハラ・ハラだよ」
「何ですか、それ」
「何かにつけてハラスメントとすぐ騒ぐことがハラスメント・ハラスメント、略してハラ・ハラ」(pp.250-251)
*1:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/01/10/232940 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/01/14/102841
*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20060929/1159532653 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20110603/1307072747 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160225/1456370001