坂口安吾『不良少年とキリスト』

不良少年とキリスト (新潮文庫)

不良少年とキリスト (新潮文庫)

ちょっと前に読了した坂口安吾『不良少年とキリスト』*1の目次を備忘のために写しておく。


復員


恋愛論
欲望について――プレヴォラク
二合五勺に関する愛国的考察
詐欺の性格
ヤミ論語
敬語論
呉清源


座談会 現代小説を語る
坂口安吾太宰治織田作之助平野謙
座談会 歓楽極まりて哀情多し
太宰治坂口安吾織田作之助


大阪の反逆――織田作之助の死
不良少年とキリスト【追悼 太宰治


口絵の写真について(林義勝)
解説(荻野アンナ

この文庫版は、1949年に刊行されたオリジナル版から、「戦争論」と「太宰治情死考」を除き、掌編小説「復員」と2本の座談会(「現代小説を語る」と「歓楽極まりて哀情多し」)を加えたもの。
さて、「無頼」とか破滅的生活といったことを期待して、この本を読んだ人は肩透かしを食ってしまうかも知れない。ここで安吾が醸し出しているのは、寧ろ常識とか保守といった匂いである。 荻野アンナさん*2は次のように突っ込んでいる;

安吾さんは、本質的には修行僧なのですが、通俗を恐れず世俗にまみれる覚悟をお持ちです。三面記事を扱って、三面記事と一緒に時代に忘れられることを恐れていない。その点、面白いのが『ヤミ論語』です。焼け跡闇市の殺伐とした世相が反映されていることで、史料的な価値があります。その上で安吾さんの古さと新しさ、両方を読み解くことができる」
「僕のどこが古いんだい?」
「『男女同権』という項目です。宴会の席で『オサンドン』をやらされた女性が、今でいうセクハラを訴えたそうです。安吾さんは宴席で『すすんで』お酌をする女流作家連を引き合いに出して、行き過ぎた男女平等をたしなめています。今なら安吾さんのほうがセクハラ扱いされちゃいますよ」
「君こそハラ・ハラだよ」
「何ですか、それ」
「何かにつけてハラスメントとすぐ騒ぐことがハラスメント・ハラスメント、略してハラ・ハラ」(pp.250-251)