「分銅」ではなく分石

朝日新聞』の記事;


弥生人も「十進法」使用か 全国初、基準の10倍の計量用重り確認
9/2(木) 9:37配信


朝日新聞デジタル

 弥生時代の計量用の重り「権(けん)」が複数出土した福岡県春日市の須玖(すぐ)遺跡群で、基準の11グラムの10倍にあたる「10倍権」を確認したと、同市教育委員会が1日発表した。全国で初めてで、弥生人が十進法を使っていたことをうかがわせる貴重な資料だという。

 10倍権は石製の円筒形で重さ116・3グラム。須玖岡本遺跡で1989年に出土したものを、武末純一・福岡大名誉教授(考古学)らが改めて調査し、権だと判断した。弥生時代に重さを量るてんびんの分銅として使われたとみられる。同じ地点から30倍の重さの30倍権も1点、新たに確認した。

 須玖遺跡群では昨年、1倍、3倍、6倍、20倍、30倍にあたる権が複数見つかった。韓国南部でも、同じ基準とみられる約11グラムの青銅製の権が出土している。

 須玖遺跡群は「魏志倭人伝」にある「奴国(なこく)」の中枢部とされ、王墓などがある。10倍権が出土した周辺には青銅器の工房があったとされ、銅や鉛の重さを量って調合していた可能性がある。武末氏は「ここは弥生時代テクノポリスといえる先進地で、弥生人が十進法を使っていたことが裏付けられた」と話す。

 今回確認された10倍権を含めた権は、8月下旬から奴国の丘歴史資料館*1の考古企画展「発見!! 弥生時代の権」*2で展示予定だったが、緊急事態宣言で休館となったため、1日から同資料館のホームページで公開を始めた。26日まで。(渡辺純子
https://news.yahoo.co.jp/articles/bbd955febb38ed0f1e5f500c46d02e15911b9c0a

共同通信(『東京新聞』)の記事;

最古級「10倍分銅」も確認 福岡、須玖遺跡群で全国初
2021年9月2日 01時11分 (共同通信
 

 国内最古級となる弥生時代の石製の分銅「権」が出土した福岡県春日市の須玖遺跡群で、新たに基準とみられる権(約11グラム)の10倍の重さの権が確認された。市教育委員会が1日発表した。市教委によると、弥生時代の10倍の権の発見は全国初で、計量に10進法が使われていたとの見方を補強する資料とみて調査を進める。
 1989年に発掘され、当時は用途不明の円筒形石製品とされていたが、重さや形状から権と特定した。須玖遺跡群ではこれまでに3倍、6倍、20倍、30倍の重さの権を確認。今回は30倍も追加確認し、権とみられる石製品は計10点となった。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/128335

「権」という字を中日辞典で調べると、先ず最初に出てくるのは、名詞としての「重り」「分銅」という意味。次が動詞としての「計量する」。その次が「権力」。「権」には、権現とか権大納言という場合の〈仮に〉という意味があるけれど、こちらの方は現代にまでは受け継がれなかったのだろうか*3
ところで、「10進法」というのはそんなに凄いのだろうか。人間の手の指が左右あわせて10本あるように、大きな数を数えるとき、、「10進法」になってしまうというのはかなり自然なことなのではないだろうか。古代羅馬では一年が10か月だったわけで、そのために英語では12月のことを10月(December)と呼んでいる。弥生人が12進法を使っていた証拠が見つかれば凄い! と思うけれど。
See also


加島淳一郎「中国度量衡展開幕式に参加して」http://www.keiryo-kanagawa.or.jp/database/kouenkai/110323kashima.pdf

*1:https://www.city.kasuga.fukuoka.jp/miryoku/history/historymuseum/index.html

*2:https://www.city.kasuga.fukuoka.jp/miryoku/history/historymuseum/1002191/1009102.html

*3:この場合、日本語では必ず呉音でゴンと念み、漢音でケンと念むことはない。