楠木正成は朱子学を学んだか、など

majisaru「5分でわかる朱子学!考え方や欠点、陽明学との違いなどをわかりやすく解説」https://honcierge.jp/articles/shelf_story/7109


まあ朱子学陽明学の違いが「5分でわかる」必要なんてないのだけど。どなたかが指摘していたけれど、Wikipedia剽窃、但し劣化版。なので、「朱子学陽明学の違い」を「わかる」ためにはWikipediaを読んだ方が効率的*1。「5分でわかる」かどうかは分からないけれど。また、末尾に本が2冊紹介されているのだけど、その2冊と本文との関係も不明。所謂further readingという感じでもないし。
ところで、「朱熹孔子に代表される古典や宋学に加えて、従来の儒学では考えられていなかった宇宙や世界などの概念を取り込み、儒教の再構築を図りました」というけれど、「朱子学」というは「宋学」の一部なんですけど。「陽明学」(陸王の学)の高祖たる陸象山も宋代の人。「朱子学」をマイナスした「宋学」って何? 王安石の学? 蘇軾(蘇東坡)の学? 
冒頭に、「後醍醐天皇楠木正成が熱心に学び、建武の新政における行動理念になったことでも知られる「朱子学」。」と書いてあって、そうなの? と思ってしまった。ネット検索してみると、けっこううじゃうじゃと出てくる。Wikipediaの「朱子学」の項もそうだけど、どれも鎌倉幕府滅亡は一味散々1333年と同じレヴェルの自明な事実として書かれているのだった。つまり、歴史学的に納得できるエヴィデンスは示されていない。ここで、拙文を読んでいるかも知れない識者にお伺いしますけど、楠木正成*2が「朱子学」をがり勉していたことを示す同時代のテクストというのはあるのでしょうか。最初、上掲のセンテンスを読んだとき、 このテクストではネグられている朱子学の系譜である水戸学*3によって楠木正成が持ち上げられたことと混同されているんじゃないかと思った。
朱子学」と「陽明学」については、やはり小島毅先生の『朱子学陽明学*4をお薦めします。勿論、「5分でわかる」わけはないけれど。