リアルだった

模範郷 (集英社文庫)

模範郷 (集英社文庫)

リービ英雄*1「模範郷」に、台中の大学で「日本語教師」をしている「笹沼俊暁」という人の『リービ英雄』という本が出てくる(pp.26-27)。そして、


そしてその「リービ英雄の物語」のほぼ全体に通底する、いわば結節点とでもいうべき場所に位置するのが、一九五〇年代の台湾の地方都市の家なのである。そこで去来する人々は故郷を失ったり、アイデンティティーを分裂させられたりしており、主人公を突き放すような他者としてある。リービ英雄の多くの作品世界に通底する移動と越境、アイデンティティー喪失のテーマは、そこから生成してくる。彼にとっての日本語は、そうした場所ではじめて出会ったものだった。まさに「作家のふるさと」なのである。(p.27)

故郷を失い、故郷を否定された人々が出会い、衝突する場で、少年時代のリービ英雄は日本語および北京語と出会った。中国大陸から来た人々にとって、北京語は、台湾の環境ではそれがもともともっていた土着性から切り離されたものとなった。また日本語も北京語も、台湾の土着の人々にとって「当然」の言語ではなく、他者の言語としてあった。(p.28)
という比較的長い〈引用〉もある。「カール・レーフラー」事件もあったし*2、「笹沼俊暁」も『リービ英雄』もフィクショナルな存在じゃないかしらと考えたけれど、巻末の「引用・参照文献」リストを見ると(p.180)、どうやらリアルであるらしい。