海亀?

NHKの報道;


大嘗祭」で使う米を収穫する地方を選ぶ儀式 亀の甲羅で占い
2019年5月13日 12時16分


天皇陛下の即位に伴う一世に一度の伝統儀式「大嘗祭」(だいじょうさい)で使う米を収穫する地方を選ぶ儀式が、13日、皇居で行われました。儀式では、宮中に伝わる「亀卜」と呼ばれる亀の甲羅を使った占いが行われました。

天皇陛下の即位に関する儀式の1つ、「斎田点定の儀」(さいでんてんていのぎ)は、午前10時から、皇居の宮中三殿にある、国内の神々をまつる神殿で行われました。

この儀式は、亀の甲羅をあぶってひびの入り具合で物事を決める「亀卜」と呼ばれる宮中に伝わる占いを行い、ことし秋の「大嘗祭」で使う米を収穫する東の「悠紀」地方と、西の「主基」地方という2つの地方を選ぶものです。

神殿の前には、「斎舎」という「亀卜」を行うための幕で覆われた建物が設けられ、儀式には宮内庁の幹部が参列しました。

はじめに宮中祭祀(さいし)をつかさどる掌典長らが、「柳筥」という「亀卜」の結果を納める箱を持って「斎舎」に入りました。そして、「火鑽具」という道具を使っておこした火で亀の甲羅をあぶり、ひびの入り具合から結果を定めたということです。

儀式は、最後に、「柳筥」が宮内庁の山本長官に渡され、40分で終了しました。

一方、天皇陛下は午前11時半すぎ、半蔵門から車で皇居に入られました。

そして、宮殿で、亀卜の結果を受けて選ばれた「悠紀」地方と「主基」地方にあたる2つの都道府県について、山本長官から報告を受けられました。

これらは皇族方や政府にも伝えられ、13日午後、宮内庁が発表することにしています。


斎田とは
「斎田」とは、大嘗祭で使う米を収穫する田んぼのことです。「斎田点定の儀」で東の「悠紀」地方と西の「主基」地方という2つの地方が選ばれたあと、それぞれ、斎田と、斎田の所有者の大田主が選ばれます。

そして、秋になると、それぞれの斎田で、「斎田抜穂の儀」という新米を収穫するための儀式が、天皇陛下の即位に関する儀式の1つとして行われます。

斎田で収穫された米は脱穀や乾燥などを経た上で、皇居・東御苑に設営される「大嘗宮」の一角に大田主によって納められます。
前回、平成2年の大嘗祭にあたっては、「悠紀」地方に秋田県が、「主基」地方には大分県がそれぞれ選ばれ、県の農業団体の推薦によって、斎田と斎田の所有者の大田主が選ばれました。

このうち秋田県で選ばれたのは、五城目町の農家、伊藤容一郎さんの田んぼ、1500平方メートルでした。

斎田となった伊藤さんの田んぼでは、収穫が近づくと周囲に金網が張られ、警察官が伊藤さんの身辺警護や田んぼの警戒にあたるなど、厳重な警備態勢が敷かれました。9月に新米の収穫が行われたあと、脱穀や乾燥などを経て、10月下旬、220キロ近くの新米が皇居に納められました。

当時、伊藤さんは、以前から作付けしてきた「ササニシキ」と、品種改良によって6年前に誕生したばかりの「あきたこまち」の2種類を育てていました。しかし、11月の大嘗祭を前に、早い時期に収穫を行う必要があったため、「ササニシキ」より早く収穫できる「あきたこまち」の田んぼが斎田となりました。

伊藤さんによりますと、「あきたこまち」の米が大嘗祭で使われたことが品種の知名度の向上にもつながり、その後の「あきたこまち」の作付けの広がりを後押ししたということです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190513/k10011914031000.html

「亀卜」に使われる亀は海亀。
『読売新聞』の記事;

占い儀式のカメ甲羅確保…宮内庁大嘗祭へ準備
2018/11/01 09:27


 来年5月1日の天皇の代替わりまであと半年。宮内庁では皇位継承に伴う皇室の儀式「大嘗祭だいじょうさい」の準備が進んでいる。代替わり直後にカメの甲羅を使う占いの儀式を控えており、東京・小笠原で希少なアオウミガメの甲羅を確保した。年度内に加工を終えるため、近く委託業者を選定する。

 占いの儀式は来年5月にも行われる「斎田点定さいでんてんていの儀」。カメの甲羅を焼き、ひび割れの具合をみる古来の占い「亀卜きぼく」で、同11月に皇居で行われる大嘗祭の中心儀式「大嘗宮だいじょうきゅうの儀」に使う新穀を収穫する都道府県を東西から一つずつ選ぶ。

 亀卜は大宝律令が制定された701年には行われていたという。宮内庁天皇陛下の退位日が決定した昨年12月にはウミガメ保護・研究の拠点がある東京都小笠原村に協力を依頼。今年春に捕獲されたアオウミガメ8頭分の甲羅を確保した。

 アオウミガメの甲羅は1987年にワシントン条約で輸入が禁止され、各自治体では捕獲の規制が進むが、村の担当者は「長年の保護活動で産卵数が増加傾向にあり、皇室行事への提供も理解が得られると判断した」と説明する。

 62年ぶりとなった90年の大嘗祭では同庁職員らが甲羅探しに奔走。小笠原村でようやく確保したが、元職員三木そうぎ善明さん(70)は「昭和天皇崩御に伴う代替わりで表立った準備ができず、綱渡りだった」と振り返る。同庁が「斎田点定の儀」の約1年半前から動き出したのは、このときの経験があったためだ。

 今後は亀卜に使う甲羅を加工する段階に移る。同庁が業者を選定するが、熟練の技術が必要だ。平成の大嘗祭で加工に携わった元べっ甲職人高橋秀治さん(56)は「甲羅を極限まで薄くする必要があった」と明かす。

 亀卜でヒビが入りやすいよう、厚さ1ミリ程度にまで削るよう求められた。高橋さんは1928年の昭和の大嘗祭を経験した職人から古来の技を学び、約1か月かけて将棋の駒の形(縦24センチ、横15センチ)の甲羅を完成させた。職人は辞めて現在は会社員だが、「求められれば伝統技術の継承に協力したい」と話している。

 ◆大嘗祭=新天皇が五穀豊穣(ほうじょう)と国家の安寧を祈る儀式。天皇が一代一度だけ臨む。初例は7世紀後半の天武天皇とされる。宗教的性格が濃いため、国事行為の「即位の礼」とは別に、皇室の行事として行われる。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20181101-OYT1T50017/

海亀を好むのは皇室神道に限らないようだ。『西日本新聞』が伝える対馬の雷神社の亀卜;

対馬・雷神社で亀の甲占い 経済は「上々」天候は「並」 [長崎県]
2019年02月08日 06時00分


 対馬市厳原町豆酘(つつ)の雷(いかづち)神社で7日、亀の甲羅に火を当て、ひび割れで1年間の吉凶を占う「亀卜(きぼく)神事」(国選択無形民俗文化財)があった。

 古代中国から約1500年前に伝わり、対馬では藩政時代に農作物の作柄などを占って藩主に報告。藩を治める上で重要な役割を果たしていた。文化庁によると、皇室を除くと、全国で対馬だけに残るという。

 今年も占いは土脇隆博さん(38)が務めた。火鉢の炭火であぶった桜の木をウミガメの甲羅片に当て、ひらめいたことを墨書した。地区の1年は「吉」。島の農業は「平年作」、水産業は「良」、経済は「上々」、天候は「並」と出た。

=2019/02/08付 西日本新聞朝刊=
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/485273/

「古代中国から約1500年前に伝わ」ったということだけど、古代中国の亀卜ということで、多くの人が真っ先に想起するのは、『荘子』「秋水」*1に出てくる、占い用に殺されて大切に蔵っておかれるのと、泥の中で尾を引き摺っているのとでは、亀にとっては、どっちがいいだろうかという話だろう*2。これは内陸部の楚国の話なので、亀といっても海亀ではあり得ない。日本における海亀の偏愛、例えば浦島太郎伝説*3とかにも関連しているのだろうか。
荘子 第2冊 外篇 (岩波文庫 青 206-2)

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