まだ熟さず?


在華坊氏*1曰く、


NHKの「ドキュメント72時間 中国 がん専門病院 路地裏の貸し台所」。中国江西省南昌の癌専門病院近くにある「愛心厨房」の72時間。中国の病院では病院食は必ずしも義務ではなく、自炊すれば患者の食費を病院食よりも安くあげることもできる。「愛心厨房」では、調理器具や調味料が供えられており、食材を持ち込んで、所定の利用料を払えば、そこで料理を作ることができる。患者の縁者たちは患者のためにそこで3度の飯をつくる。インタヴューされた人を見る限りでは、「愛心厨房」の利用者は農民や民工(出稼ぎ労働者)といった人々が多い。ということは、病気になる以前の人生で、家族と長い間離れ離れで生きなければいけなかった人たちが多いというということを想像させる。
利用者の中には、親の介護に専念するために仕事をやめたという若い男性がいて、また、祖父母の世話のために高級中学*2進学をあきらめたという少女もいる。男性の場合はもう成年だけれど、少女の場合は、日本でなら「ヤングケアラー」*3と呼ばれて然るべき存在といえるだろう。中国社会では、「ヤングケアラー」というか、この少女みたいな立場を生きている人、或いはここまで深刻でなくても「家族にケアを要する人がいるために、家事や家族の世話などを行っている、一八歳未満の子ども」(澁谷智子『ヤングケアラー』、p.i)としての「ヤングケアラー」というのはどのくらいいるのか、社会的にどのように扱われているのかということが気になった。先ず、中国でもこの問題は存在し、(日本在住ではあるが)この問題を研究する中国人学者もいる*4。日本でも「ヤングケアラー」という言葉が浸透し始め、大規模な実態調査が行われ、中央政府地方自治体がその対策に乗り出し始めたのは、はごく最近のことだといえる。中国ではどうなっているのかはわからないだけれど、ここで中国語版Wikipediaの感想を述べてみる。そもそもyoung carerを中国語に訳すとどういうのかということを知りたくて、Wikipediaに辿り着いたわけだけど、一応「未成年照顧者」という項目が立てられている*5。しかし、「未成年照顧者」というのは決定的な訳ではないようだ。そのほかに、「年軽照顧者」*6、「青少年照顧者」、「児童少年照顧者」という訳語が挙げられている*7。まあ、日本語の場合は「ヤングケアラー」そのままなので、もしちゃんと訳せということになれば、中国語と同様なばらつきは出てくるのだろう。日本語版と比べると*8、その分量が圧倒的に少ないということに気づく。さらに、中国語圏(中国大陸、津台湾、香港)に関わる記述は全くない。ここから、中国語圏では、「ヤングケアラー」というのは深刻な社会問題としてまだ認識されていないのではないかという印象を持ってしまったのだけど、以下のBBCの記事を読むと、少なくとも台湾では相当に深刻な問題として認識され、対策が模索されていることがわかる;


呂嘉鴻「台灣「年輕照顧者」困境:14歲,中學生……他們的人生卻被按下了暫停鍵」https://www.bbc.com/zhongwen/trad/chinese-news-66510329