浣熊に狙われて

加賀山翔一*1「トウキョウサンショウウオの受難」『生物多様性ちばニュースレター』(千葉県生物多様性センター)78、pp.1-2、2023


曰く、


トウキョウサンショウウオHynobius tokyoensis*2は千葉県、 神奈川県、東京都、埼玉県、栃木県南部に分布する日本固有のサンショウウオです。丘陵地の林内に生息するため普段はあまり見かけませんが、繁殖期の1月から4月頃にかけては隣接する水田や水路、湧水の溜まった水たまり等の浅い止水に集まり、バナナ状の卵のうを枯れ枝や落ち葉に産み付ける様子が観察できます。
本来m里山等で見られる身近な生き物でしたが、近年生じた様々な人為的な影響を受け、各地で減少しつつあります。(後略)(p.1)

千葉県内では、南部(館山市南房総市)から北東部(銚子市)にかけて、丘陵地帯を中心に分布しています。
分布域は狭くないものの、近年生じた様々な人為的な影響を受けて各地で減少していることから、2011年に発行された千葉県レッドデータブックより最重要保護生物(ランクA)に選定されています。加えて、環境省レッドリストでは2006年より絶滅危惧II類(VU)に選定されています。(p.2)
トウキョウサンショウウオの「減少要因」のうち、

近年、特に注目を集めているのが、ネットオークション等での販売を目的とした乱獲による影響で、産卵のために水辺へ集まってきた成体や産み落とされた卵のうが根こそぎ持ち去られることで、その地域の個体群を消失させることが懸念されています。
トウキョウサンショウウオは成熟までに5年ほどかかり、卵のうや幼生の段階でその多くが死亡(被食など)すると考えられています。そのため、一度に多くの成体や卵のうが取り除かれてしまうと短期間で個体数が急激に減少し、個体群を維持する上で深刻な状況に陥る恐れがあります。(ibid.)

トウキョウサンショウウオの個体数回復を目指した生息環境の整備等が各地で進められている中で、種の存続を脅かす乱獲への対策として商業流通への規制が求められていました。2020年に、種の保存法によってトウキョウサンショウウオが特定第二種国内希少野生動植物種(以降、特定第二種)に指定され、販売・頒布を目的とした捕獲や譲り渡し等の行為のみが禁止されることとなりました。これにより、捕獲や飼育等を伴う保全活動(個体数のカウントや測定等)を妨げずに、過剰採集を規制しながら生息域内での保全対策を促進することができると期待されています。(ibid.)
しかし、「分布拡大中のアライグマによる食害も各地で」発生している;

(前略)アライグマは繁殖のために水辺へと集まった多くの成体やそれらが産み落とした卵のうを食害するため、乱獲と同様に短期間でトウキョウサンショウウオの個体数を激減させることが懸念されています。従って、今後はアライグマからの捕食圧を軽減させるよう防除対策を進めていくことが重要課題となってきます。アライグマの防除に加え、トウキョウサンショウウオの成体や卵のうが捕食されないように囲いで覆うなどの大作をとっている地域もあるようです。(ibid.)