格上げの話

加賀山翔一*1特定外来生物への指定が予定されている身近な外来種アメリカザリガニとアカミミガメ~」『生物多様性ちばニュースレター』(千葉県生物多様性センター)74、pp.1-2、2022


今年5月の「外来生物法」改正によって、「アメリカザリガニ*2と「アカミミガメ」*3が「特定外来生物」に指定されるという。


アメリカザリガニとアカミミガメは既に多く飼育されており、現行法の規制(飼育等、輸入、譲渡し等及び放出等の禁止)を適用すると、飼育個体が大量に野外に放出され、生態系等への深刻な被害が拡大する恐れがあることから、これまで特定外来生物の指定が見送られてきました。今回の法改正では、今後新たに特定外来生物へと指定される種(上記2種を想定)については、輸入、販売、野外への放出等を禁止にする一方で、種ごとに「個人の販売目的でない飼育」や「個人間の無償譲渡等」の一部を適用除外にできる規制手法が盛り込まれました。(後略)(p.2)

アメリカ原産のアメリカザリガニは、平野部を中心に、日本全国の河川、池や水田等に定着しています。多種多様な水草や水生動物(トンボ類、ゲンゴロウ類やサンショウウオ類等)を捕食するため、生物多様性に大きな悪影響を与えていることが分かっています。また、餌となる水生動物をつかまえやすくするために隠れ家となる水草を刈って解放的な環境を創出するとの報告もあり、水草を消滅させ、濁った池に改変する等の影響も指摘されています。また、病原菌を媒介することで、在来種である二ホンザリガニの大量死を惹き起す恐れや、さらに、水田内や畔に巣穴を掘ることで漏水や畔の崩壊を引き起こしたり、イネを食害するなど農業への影響が指摘されています。(p.2)
ところで、「アメリカザリガニ」については誤解していたことがある。在来種の二ホンザリガニを追い詰めたのはアメリカザリガニだと思っていたのだけど、二ホンは冷水域を棲み処とするが、アメザリは温水域を好む。二ホンザリガニがいる東北地方や北海道において、アメザリは温泉などの常時温水のある場所にしか進出できないのだった。二ホンザリガニと棲息環境が競合しうるのは、寧ろウチダザリガニという北米からの外来種である*4
それから、100年に及ぶ侵略の結果、既に日本全土がアメリカザリガニの領土になってしまったのかと思っていたのだが、アメリカザリガニを寄せ付けない土地はまだまだけっこうあるんだなということを知った。
環境省「なぜそこら中に? まだ大丈夫なところもあります!」から*5

アメリカザリガニが生息可能な環境条件においても、未だ侵入していない地域も存在していることから、新たな放流を控え拡散を防ぐことが重要であるといえる。

分布が広がっている関東平野においても、多摩丘陵奥多摩などでは アメリカザリガニが侵入していない場所もあるとされる。
兵庫県神戸市に多数分布する放棄ため池のうち54箇所で2000年夏季と2001年冬季に水生生物調査を行った結果、17箇所でアメリカザリガニを確認し、それ以外のため池では確認されていないことが報告されている。
石川県珠洲市はため池が多数存在するが、その中でアメリカザリガニが定着している水域は一部のみとされ、周辺部のため池では在来の水生昆虫相が保たれている場所が多いとされる。
首都圏でも、神奈川県三浦半島ではかがみ田(横須賀市野比に自然状態で残る最大規模の谷戸田)のように、アメリカザリガニが侵入していない箇所がある。
水田地帯からかなり離れているため池。特に、内陸部あるいはやや標高の高い地域の里山に残っている傾向がある。
このため、都市部であっても、安易にアメリカザリガニを水辺に放さないようにする必要がある。