留学生たち

4月21日付の笠井哲平氏のツィート;


これに吃驚したばかりなのだけど、さらに吃驚。
朝日新聞』の記事;

ミャンマー国軍の留学生、今年度も4人受け入れ 防衛省に反発も
成沢解語2022年4月26日 17時26分



 岸信夫防衛相は26日の衆院安全保障委員会で、昨年2月のクーデターで実権を握ったミャンマー国軍から留学生4人を、今年度に受け入れたと明らかにした。クーデター後も受け入れを続けていることについては、市民を殺害している国軍への支援にあたるとして国際人権団体が批判していた。

 岸氏は立憲民主党徳永久志氏への答弁で、4人のうち2人は防衛大学校の本科、1人は同校の研究科、1人は航空自衛隊幹部候補生学校で受け入れたと説明。「省内でも様々議論してきた」としつつ「民主主義、文民統制のあり方を理解してもらう人間を1人でも育てていく」と述べた。

 また、同日の会見では「民主主義国における組織のあり方をしっかり留学生に教え込むことで将来のミャンマーを立て直す力になってもらえれば」と話した。

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の笠井哲平さん(31)は取材に、「極めて残念だ。ミャンマー国軍による市民への暴力に、日本政府が加担する可能性が残る」と批判。ミャンマー出身のミンスイ・在日ビルマ市民労働組合会長は「日本政府は今後も国軍との関係が続くことを見込んでいる。留学生受け入れは民主主義国家のやり方としてはおかしい」と語った。(成沢解語)
https://www.asahi.com/articles/ASQ4V5JMNQ4VUTIL00Y.html


ミャンマー軍留学生、授業料免除・給付金提供へ 防衛省
成沢解語2022年4月27日 18時12分


 昨年2月のクーデターで実権を握ったミャンマー国軍から、防衛省が今年度の受け入れを明らかにした留学生4人について、同省が授業料の免除と生活費提供の対象とすることがわかった。4人のうち2人は幹部、残る2人は幹部候補生だということも明らかになった。

 防衛省によると、幹部2人のうち、防衛大学校研究科に入校予定の1人は陸軍中尉、航空自衛隊幹部候補生学校に入校予定の1人は空軍中尉。防衛大学校本科に入校予定の2人は幹部候補生だという。

 ミャンマー国軍との間では自衛官を派遣して医学や気象学を教える支援を取りやめており、今後も中断を継続する。一方、日本語教育の教官育成を後押しする支援は続けるという。(成沢解語)
https://www.asahi.com/articles/ASQ4W61MRQ4WUTIL047.html

笠井哲平「日本政府、ミャンマー国軍から新たに士官候補生・幹部を受け入れ訓練」https://www.hrw.org/ja/news/2022/04/27/japan-train-new-cadets-officers-abusive-myanmar-military


曰く、


ミャンマー国軍を「内部から変化させる」という名目での試みは、日本政府の希望的観測に過ぎず、むしろ逆効果を与えることが懸念される*1。また、ミャンマー国軍の責任を追及しようと励んでいる米国、英国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなど各国政府による努力を弱体化させることを意味する。

ミャンマー国軍には悲惨な人権侵害を繰り返してきた歴史がある。2017年8月には、現ミャンマー国軍総司令官のミンアウンフライン氏の下、ラカイン州少数民族ロヒンギャに対して、人道に対する罪、及びジェノサイドにあたる行為を犯した。74万人以上の人々が隣国のバングラデシュに避難し、また現在も約60万人のロヒンギャミャンマーの治安部隊によってラカイン州の村やキャンプに閉じ込められている。この状況はアパルトヘイトともいえる。

また、ミャンマー国軍は数十年に渡り、少数民族の地域などで即決処刑、レイプ、無差別爆撃、拷問、放火など数多くの人権侵害を民間人に対して行ってきた。2021年のクーデター以降も、ミャンマーの治安部隊は「軍事政権」に反対する人々を殺害、拷問、または恣意的拘束をしている。これらは人道に対する罪にあたる。また、政権奪還後、国軍は少数民族の地域で軍事作戦を再開し、戦争犯罪を継続している。

もし日本政府は本気で「ミャンマーの将来の在り方」を考えているのであれば、ミャンマー国軍との協力を断ち、国軍幹部及び軍系企業に対して対象限定型経済制裁を課すべきだ。ミャンマー国軍の残虐行為に直接的・間接的に関与する可能性がある士官候補生及び幹部を訓練するということは、日本政府が国軍の人権侵害に加担するリスクを負うことになる。

*1:See Teppei Kasai “Japan’s government should stop training Myanmar’s military” https://myanmar-now.org/en/news/japans-government-should-stop-training-myanmars-military