「カフカ」故に?

いしかわじゅん*1「戦う日々、深まる謎」『毎日新聞』2021年9月5日


松本直也『怪獣8号』*2について。


『怪獣8号』は、怪獣漫画だ。それ以外に表す言葉がない。
日本は実は怪獣大国で、発生率は世界でも指折りなのだ。巨大な怪獣が一城的に暴れ回り、それに対抗するために設立された日本防衛隊が日々戦っている。
主人公の日比野カフカは子供の頃に、住んでいる街を怪獣に破壊され、幼なじみの亜白ミナと防衛隊に入って一緒に怪獣を倒そうと誓ったのだが、入隊試験に受からず怪獣の死体処理会社に入り、鬱々と怪獣を処理している。一方ミナは、防衛隊に入って戦果を上げ、今では防衛隊最大のスターとなっている。カフカには、眩しく遠い存在だ。
ある日、カフカが怪我で入院している病室に小さい怪獣が現れ、カフカの体に入り込んでしまう。カフカは怪獣に変身できるようになってしまうのだ。カフカだけに。後に怪獣8号と呼ばれる、強大な力を持つ怪獣だ。
「変身」*3が生起するのは「カフカ」故なのね。虫ではなく「怪獣」だけど!