小関隆『イギリス1960年代』

小関隆『イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへ』*1を読了したのは先月末。


まえがき


序章 1960年代はサッチャーを呼び出したのか?
第1章 文化革命
第2章 ビートルズの革命
第3章 「豊かな社会」とニューレフト
第4章 「許容する社会」
第5章 モラリズムの逆襲
第6章 サッチャリズムとモラリズム
終章 1960年代とサッチャリズム


あとがき
参考文献
主要図版出典一覧
イギリス1960年代関連年表

実はこの本を読んで、メアリ・ホワイトハウスというおばはんについて初めて詳しく知ったのだった。ピンク・フロイドの『アニマルズ』*2の歌詞に出てきて、その名前を初めて知った。しかし、具体的に知ることはなかった。英国では超有名人だったというのに! 
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本書は、英国の80年代、マーガレット・サッチャー新自由主義)を「1970年代の危機によって説明」することを相対化することを目指している。「1950~60年代の基調だった経済成長が71年のドル・ショックと73年の石油ショックの直撃ではっきりと頭打ちになり、インフレと失業増加が同時進行する未曽有のスタグフレーションが生じ、労働争議が相次ぎ、電力不足で週三日操業とロウソク生活が強いられ、テロリズムが頭をもたげ、「統治不能」のことばさえ飛びかった70年代は暗澹たる時代だった」(p.3)。しかし、「近年になって、1970年代を危機一色で把握すべきでないことが明らかになってきている」(p.5)。「20世紀で最も貧富の格差が小さくなったのは1970年代半ばだった」(ibid.)。そこで、本書は以下のような仮説の下に論が進められる;

①大衆消費を基盤とする1960年代の文化革命cultural revolution(第1・2章)の系経験が、サッチャリズムの描くポピュラー・キャピタリズム(富裕でない者でも財産所有や株式保有の果実に与れるような資本主義)の夢に惹かれる個人主義的な国民(第3章)を形成した。
②「許容する社会permissive society」(第4章)の広がりが、政治の世界でのサッチャーの栄達を可能にする条件を整えた。
③「許容」を批判するモラリズム(第5章)の台頭が、サッチャーへの追い風となった。(pp.5-6)
でも、改めて、1970年代は重要なのだと思う。少なくとも音楽的には。巻末の「関連年表」を見れば、所謂ブリティッシュ・ロック(ハード・ロックプログレッシヴ・ロック)の黄金時代は、ビートルズが解散した後の、経済的には「暗澹たる時代」だった1970年代だったのだ。1970年代の英国を巡っては、Francis Wheen Strange Days Indeed: The Golden Age of Paranoia*3を(久しぶりに)マークしておく。