「淡いピンクのロースト」(本文に関係なし)

A Foot in the Door: the Best of Pink Floyd

A Foot in the Door: the Best of Pink Floyd

ピンク・フロイドのベスト・アルバムA Foot in the Door: The Best of Pink Floydを聴く。俺のお目当ては”See Emily Play”(「エミリーはプレイガール」)だったのだけれど*1、かなり久しぶりにこの曲を聴いて、自分としては幸福感に充たされた。曲自体としては、如何にも1960年代のサイケデリックという感じなのだろうけど、ここに鳴り響いているのは紛れもなく(その後は永遠に失われてしまった)イノセントなピンク・フロイドだといえる。この一曲を聴けただけでもこのディスクを買った甲斐があったといえるのだが、〈ベスト・アルバム〉としてはどうなのか。選曲はThe Dark Side of the MoonWish You Were HereThe Wallからの曲に集中している。つまり、シド・バレット*2が抜けてからThe Dark Side of the Moonに至るまでのピンク・フロイドの足跡がオミットされている(何故かAnimalsもスルーされている)。問題はそれだけではない。或る意味では、よくピンク・フロイドのメンバーのリリース許可が下りたもんだとも思う。彼らはコンセプト・アルバム収録の曲がバラでダウンロードされることを嫌い、EMIに対しての「歌を文脈を外して売ること(selling songs out of context)」を「明確に禁止する」ことを求めて、裁判でもそれが認められていたからだ*3The Dark Side of the MoonWish You Were HereThe Wallも明らかに「コンセプト・アルバム」であり、このベスト・アルバムは明らかに「歌を文脈を外して売ること」にほかならないからだ。

Dark Side of the Moon

Dark Side of the Moon

炎?あなたがここにいてほしい?

炎?あなたがここにいてほしい?

The Wall

The Wall

Animals

Animals

グレイス・ペイリー「淡いピンクのロースト(The Pale Pink Roast)」(村上春樹訳)。たんに「ピンク」繋がりにすぎないのだが。「食人種はいったん人肉の味を覚えると、人のことを大きな豚として、淡いピンクのローストとして眺めるようになるのだということを、アンナは本で読んだことがあった」(pp.68-69)。
人生のちょっとした煩い (文春文庫)

人生のちょっとした煩い (文春文庫)