乱歩焼失

毎日新聞』の記事;


「貴重な宝が一夜で…」 江戸川乱歩館、火事で未整理資料など焼失
10/26(火) 9:46配信


毎日新聞

 24日午後11時45分ごろ、三重県鳥羽市鳥羽で火事があり、3階建てビルと周辺の木造家屋計7棟が焼失、1人の遺体が見つかった。



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 「鳥羽市の貴重な宝物が一夜で消えてしまった」

 真っ黒に焼け落ちた「江戸川乱歩館~鳥羽みなとまち文学館」*1を前に、同市文化財専門員の野村史隆さん(73)は、こう言って立ちすくんだ。同館は、探偵小説の先駆者、乱歩(1894~1965年)*2と親しく交流した岩田準一(1900~45年)*3の自宅と書斎、蔵、展示館の4施設からなり、自宅と書斎が全焼した。未整理の資料がたくさんあったといい、野村さんは「調査にかかろうとした矢先の火災。残念だ」と肩を落とした。

 江戸川乱歩館は2002年、木造2階建ての岩田の自宅を改装してオープンした。岩田は伊勢志摩の習俗や男色に関する研究に没頭し、「志摩の海女」「本朝男色考・男色文献書志」などを出版する一方、乱歩のほか、博物学者の南方熊楠、詩人の竹久夢二歌人与謝野鉄幹ら多くの文化人と交友を重ねた。

 乱歩は1917年に鳥羽市の造船所に勤務し、当時中学生だった岩田と知り合った。1年3カ月の短い滞在だったが、妻となる小学校教員だった隆とも出会った。岩田とは男色研究で意気投合し、乱歩と放浪の旅にしばしば出かけた。乱歩の「パノラマ島奇談」の挿絵は岩田が手掛けた。

 同館の資料をデータ化するアーカイブ事業は20年末から、日本近代文学が専門の金城学院大学名古屋市)の小松史生子教授らによって進められてきた。現在は中断しているが、焼け落ちた2階には手つかずの資料が残されており、岩田の側面から見た乱歩に関する新しい発見が期待されていた。

 野村さんや同館を管理運営する鳥羽商工会議所は「『幻影城』と名付けられた蔵、展示館、鉄製のケースに入れてあった手紙類は、かろうじて焼け残った。しかし、未整理の資料がほとんど焼けてしまったのはショックだ」と話している。

 鳥羽商議所によると、同館は平日は予約制で、一般には土日祝日に開館。今年1月からの入館者は1900人(コロナの感染拡大防止のため約4カ月間閉鎖)に達する。若い女性に人気を集めていた。【林一茂】
https://news.yahoo.co.jp/articles/d700fda3c5cf25df098e7f5edffbf3140515d0fc