太田省一*1「なつかしい一冊 筒井康隆著『時をかける少女』」『毎日新聞』2021年1月23日
『タイム・トラベラー』(『時をかける少女』)と「筒井康隆」とのギャップ;
「島田淳子」という名を聞いてピンときた人は、私と世代が近いはずだ。
かつてNHKに「少年ドラマシリーズ」という十代向けのドラマ枠があった。夕方6時台の放送である。その記念すべき第1作が1972年放送の「タイム・トラベラー」で、その主演を務めたのが島田淳子だった。
小説『時をかける少女』と「原田知世主演、大林宣彦監督による映画版」*2;
このドラマに夢中になった私は、原作が筒井康隆という作家の「時をかける少女」であることを知る。そこから、筒井の作品を読み漁る日々が始まった。だが「時をかける少女」のようなものを求める私の期待は、物の見事に裏切られた。毒と風刺、パロディが満載の過激な作品のオンパレード。とはいえ結局、中学時代の私は筒井ワールドにどっぷりのめり込むことになったのだが。
私も最初はNHKのドラマだった。
「時をかける少女」は、青少年向けのジュブナイル小説。そう言うと明るくさわやかな内容を造像するが、改めて読んでみると「分かれ」こそがこの小説のテーマであることに気づく。
一夫は未来の世界に戻らなければならないことを和子に告げる。そして歴史の改変を防ぐため、自分の記憶を和子の頭からすべて消し去ってしまわなければならない。和子は記憶を消さないよう懇願する。だが、その望みは叶えられない……。SF的設定にもかかわらず、いやむしろそうだからこそ、誰もが思春期に経験する、そして人間的成長にとってもある意味必要でもある別れの切なさがひしひしと伝わってくる場面だ。
小説はここで終わるのだが、実は映画ではその後の「再会」も描かれている。年月は過ぎ、原田知世演じる和子は大学で薬学を研究する日々だ。そんなある日、大学の廊下でぶつかった男性に道を尋ねられる。相手は一夫だ。だがそのことに和子は気づかない。そして2人は別々の方向に歩き出す。そこに流れてくる原田知世の歌う「時をかける少女」。(後略)
*1:https://twitter.com/ota_sho
*2:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20060418/1145330536 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090805/1249485120 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170612/1497284431 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180305/1520202883 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180628/1530119987 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2019/04/22/110420 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/04/12/025007 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/04/16/024723 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/04/27/023336 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/09/02/153053