「国」からの解放

池澤夏樹*1「必要に迫られ生成する言語」『毎日新聞』2020年7月25日


西江雅之*2ピジンクレオル諸語の世界』の書評。
本の内容とは直接関わらない池澤氏の感想を切り取っておく;


本書を読んで思うのは、言語を制度的な枠から解放して生成的な視点から見直さなければならない、ということだ。戦争が終わって「国史」は「日本史」になったが、今もって日本語は「国語」である。ここから一国一言語という勘違いが生じる。世界には複数の言語を持つ国の方が多い。
言葉は一人一人の人間が思いを伝えるべく発語する一回ごとに更新されてゆく。その総体が「言語」である。