そこそこ納得した?

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

TCF*1「『タテ社会の人間関係』中根千枝 ――ルールではなく人に従う」https://the-cosmological-fort.hatenablog.com/entry/2020/09/19/134226


中根千枝のロング・セラー『タテ社会の人間関係』*2について。
この本は、多くの日本人が自分の学校生活や職業生活における経験から、著者が「タテ社会」として語っている人間関係(社会関係)の様態を、そこそこ納得しているからこそ、21世紀に至るまで、読まれ続けているとは言えるだろう。、丸山眞男も「タコツボ型」として『日本の思想』*3の中で論じていたもの*4も中根のいう「タテ社会」と関連するだろう。勿論、批判すべき点は多々あるだろう。例えば、その非歴史性。日本社会は何時の時代でも「タテ社会」だったのか? また、共時的な準位でも、日本社会を「タテ社会」で覆いつくすことは可能なのか。それから、「タテ社会」というのは果たして日本特有のものなのだろうか? 

日本の思想 (岩波新書)

日本の思想 (岩波新書)

ところで、『タテ社会の人間関係』はかなり早く英訳本が出た筈。日本人が日本語で読むのと、外国人が英語で読むのとでは、その意味や機能は違ってくる筈だ。さらに、かつて海外の日本の在外公館(大使館や領事館)には『タテ社会の人間関係』の英訳本が置かれ、無料で配布されていたという話がある。勿論、これは伝聞の伝聞のその又伝聞といった感じのかなりいい加減なソースによる情報で、裏は全く取れていない。まあ、都市伝説の域を出ないと言えるかも知れない。『タテ社会の人間関係』を英訳するということ自体、身内の恥を外に曝すという意味で、「タテ社会」の作法に反するのではないかという気もするのだけど、それはともかくとして、『タテ社会の人間関係』を外国人に読ませるというのは、日本人(或いは日本企業や日本政府)の言動や振舞いは国際的なスタンダードからは外れているかもしれないけれど、そこんところ、〈合理的配慮〉を宜しく! という事前のエクスキューズのようなものだったのだろうか。