「スタイル」、「シルエット」、「リズム」(メモ)

倉沢仁志*1「強さの鍵はシルエット 「スタイル」が人を感化」『毎日新聞』2020年5月14日


フェンシングの三宅諒選手と哲学者の國分功一郎*2との対談。
抜書き。


國分 ドゥルーズは、哲学者は必ずある文体を持っていなければならないと言っていました。文体は英語で「スタイル」ですよね。哲学者は概念を扱う独特のスタイルを持っています。だから、新しい概念が創造されることは、新しいスタイルが生まれるということでもある。僕自身、新しい書き手に接した時に、この人は文体が新しいなと感じることがありますね。人を感化するのは何よりもスタイルであり、どんなことを主張してもそれに見合うスタイルを獲得していなければ人には届かない。
三宅 アスリートにとって必要なのは、シルエットで分かるということだと思っています。「これは誰でしょう?」と言った時、そのスポーツをする人間であれば分かるといった具合です。「強くなりたいが、どうすればいいか」と聞かれたら、僕は「シルエットで分かるようにしなさい」と言っています。
國分 シルエットで分かるという話は面白い。スタイルの創造に似ているのが法律の判例だと思う。法律というルールそのものは変わらないけれども、新しい判例は法の運用に変化をもたらすわけです。新しい判例は、思いもよらなかった事態とか新しい法解釈によって生まれるわけですが、スポーツにおけるスタイルはどう創造されるのだろう?
三宅 背の高い選手と低い選手では、取る戦法が変わる。小さい選手は体力をつけるべきだし、大きな選手は一定の距離感を持った攻撃ができたり、相手を動かせてカウンターを仕掛けたりする戦法になります。最後はリズムです。対人競技はリズムが同期したら負けなんです。相手にリズムをどう合わせさせるかを、動きの中で間合いを計りながらやるのがポイントだと思っています。それらをうまくかみあわせた方法がスタイルになっていくと思います。