「小説」の帰結

承前*1

NHKの報道;


京アニ放火事件 容疑者と同姓同名の人物が小説の公募に
2019年7月30日 19時05分


京都アニメーション」のスタジオが放火され、35人が死亡した事件で、会社側は、過去に行った小説の公募に、青葉真司容疑者と同姓同名の人物が応募していたことを明らかにしました。

京都アニメーションの弁護士が30日夕方、報道各社に対して送ったメールによりますと、小説の公募に応募していたのは、青葉容疑者と同姓同名の人物で、これまでに報道された住所の一部と一致していたということです。

会社側はこれまで、小説の応募は確認されていないとしていましたが、警察が青葉容疑者の名前や住所を発表したことを受けて、詳しく調べた結果、判明したとしています。

応募された小説は、形式が整っておらず、1次審査を通過していなかったことから、八田社長を含め、社内では共有されていなかったと説明しています。

そのうえで、京都アニメーションは「本日現在、当該人物と放火事件の容疑者とが同一人物であるかはいまだ確定しておらず、警察において引き続き捜査中であり、コメントを控えざるをえないことをご理解ください」としています。

この事件で、青葉容疑者は、現場で身柄を確保された際、「小説を盗まれたからやった。社長を呼べ」などと叫んでいたことがわかっているほか、警察は、さいたま市の自宅アパートを捜索した際、小説を書くためとみられる原稿用紙を押収していました。

京都アニメーションは、これまで制作した作品と、青葉容疑者と同姓同名の人物が応募した小説との関連について、「同一または類似の点はないと確信しております」としています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190730/k10012014591000.html

「パクりやがって!」というのが少なくとも犯人の主観性においては〈真実〉だったことの客観的証拠。また、「原稿用紙」が押収されている*2。手書きで応募したのか?
また、『京都新聞』の記事;

京アニに爆発物もって突っ込む」 昨秋ネットに書き込み
8/2(金) 11:00配信 京都新聞


 京都市伏見区桃山町因幡アニメ製作会社京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオの放火殺人事件で、インターネットの掲示板サイトに昨秋、「京アニに裏切られた」「爆発物もって京アニ突っ込む」などと書き込まれていたことが1日、分かった。
 青葉真司容疑者(41)=殺人などの疑いで逮捕状=は身柄確保時に「小説を盗まれたから火を付けた」と話していた。過去には青葉容疑者とみられる同姓同名の人物が同社に小説作品を応募し、落選していたことも判明している。書き込み内容が青葉容疑者の言動と似ている部分があることから、京都府警捜査本部はさいたま市の自宅から押収したパソコンやスマートフォンを解析し、関連を調べる。
 掲示板サイトへの投稿は昨年9~11月にあった。「現行(原文ママ)落とされた」「京アニに裏切られた」「アイデアをパクる貴様らだけは絶対に許さん」と同社に恨みを抱く内容だった。「無差別テロ」「爆発物もって京アニに突っ込む」と危害を加える趣旨の投稿のほか、「ムショ」という言葉を多用して刑務所での服役歴をうかがわせる記載もあった。青葉容疑者は2012年6月に強盗事件を起こし、同年9月に実刑判決を受けている。これらの書き込みが同一人物によるものかどうかは不明。
 京アニの公式ホームページにも昨秋ごろ、問い合わせフォームに何者かが殺害予告の書き込みをし、同社が府警に被害届を出していたことが分かっている。捜査関係者によると、同社には脅迫的な書き込みやメールなどが200件超あったといい、中にはスタッフを名指しするものもあったという。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190802-00000011-kyt-l26

但し、犯人によって書かれたものかどうかはまだわからない。
日刊ゲンダイ』の記事によれば、「パクりやがって!」というクレームはかなりありふれているらしい;

京アニ放火事件も暴走か…思い込み「盗作クレーム」の現状
8/2(金) 9:26配信 日刊ゲンダイDIGITAL


「小説を盗まれた」と容疑者が説明した京都アニメーションの放火事件に新展開だ。青葉真司容疑者(41)が同社のコンテストに小説を応募していたことが判明。ただし、形式面に関する1次審査を通過しなかったという。

「この応募作をアニメに盗作されたと勘違いして暴走したのではないかとの見方が強まっています」(捜査事情通)

 小説や脚本を文学賞などに応募し、他人の作品に類似の部分があると「パクられた」と考える。こんな思い込みの強い人は少なくない。ベテラン編集者が言う。

「よく聞くのがミステリー小説。ある推理作家が、トンネルの中で地図の赤い部分がオレンジ色に見える現象を小説に使った。作家が自分で考案したトリックですが、一般人から『自分が〇〇新人賞に送った小説と同じだ。パクられた』と抗議されたことがあります。歴史小説では戦国時代の合戦をノベライズした作品に、合戦の地元に住む郷土史家が『自分が考案した戦い方を使われた』とクレームをつけたりする。誰もが考えつくアイデアなのに、世の中で自分しか発想できないものと思い込んでいるのです」

 このほか実用書などがヒットした時、「半年前に自分が書いた企画書と同じ内容だ」と出版社に抗議する人も。多くがフリーライターで、企画書を複数の出版社に送付したという。ところが、よくよく調べたら問題の出版社には送っていなかったなんて笑い話のようなことも起きている。

 あるテレビ局が、小学生が白血病で死ぬ話を主軸にした2時間ドラマを放映した。数カ月後、北海道の北端の町の小さな劇団が「自分たちの脚本がパクられた」と声を上げた。劇団の脚本は小学生が死ぬという月並みなストーリー。一方、テレビドラマは子供の死を中心に周囲の大人たちの生きざまを描く群像劇。両者の違いは一目瞭然だが、劇団の脚本家はアイデアを盗まれたと主張した。

 京アニの事件を見ると、こうしたトラブルを笑って済ますわけにはいかない。どう対処すればいいのか。明大講師の関修氏(心理学)*3が言う。

京アニ事件の容疑者は自己中心型パーソナリティーで、京アニへの愛情が、『小説を盗まれた』と思った瞬間、憎悪に転じたと思われます。こうした人がクレーム電話をかけてきたら、ガチャンと切るのは禁物で、相手の主張をよく聞いてあげることです。その上で彼が盗作されたと主張する場面を、制作側がどんな経緯で発想したかを丁寧に説明すること。しっかりコミュニケーションを取れば、自己チューの人も矛を収めるものです」

 第二の悲劇が起きないよう、慎重な対応が重要だ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190802-00000015-nkgendai-life

最近の「パクりやがって!」クレームということだと、例えばZEPのメンバーが訴えられた「天国への階段」裁判(原告側の敗訴)*4
Led Zeppelin 4: Zoso

Led Zeppelin 4: Zoso