NHKの受難

承前*1

京アニ火災事件に「NHK陰謀論」 加速するデマ情報に注意を」https://wezz-y.com/archives/67962


戦後最悪の殺人事件となってしまった京都アニメーション放火事件。何故か、あのNHKが舛添もとい巻き添えを食っているのだという。


NHKは24日の放送局長定例会見で、アニメ制作会社「京都アニメーション」(本社・京都府宇治市)の放火事件にまつわるネットのデマを否定した。

 事件当日の7月18日、NHKは午前11時から京都アニメーション(以下、京アニ)への取材を予定していたという。パラリンピックを題材にしたアニメ『アニ×パラ』を共同で制作しており、関連した取材だった。ただし、事件が発生したのは午前10時半頃であり、NHKのディレクターが到着した時はすでに火災が発生していた。

 NHKの木田幸紀放送局長はこうした経緯を説明したうえで、一部ネット上で「取材に向かっていたディレクターと容疑者には面識があった」との情報が広まっていることについて、「一切ない」と否定した。


 このあまりに凄惨な事件に、ネットでは情報が錯綜し、いつしか「NHKが事件に関与していたのではないか」という根拠のない噂が流れ出していた。

 事件当日18日の夕方、NHKは事件のあらましを報じた際に、<火事が起きた『京都アニメーション』に番組の撮影のため向かっていたNHKの男性ディレクターが容疑者とみられる男が確保された現場を見ていました>とし、タクシーの車内からスマートフォンのカメラで収めた容疑者確保の決定的瞬間を流していた。

 翌19日、京アニの八田英明社長が報道陣の取材に応じ、当時の状況について「来客対応のためにスタジオのセキュリティを解除していた」と説明した。するとネットでは、「NHKが取材しなければ犯人はスタジオ内に入れなかった」「NHKの取材のせいで事件が起こった」という意見が噴出する。

 さらに、新聞・通信各社が八田英明社長の発言を報じるなか、NHKだけはセキュリティ解除の理由を「通勤時間帯のため」と報じていたとして、ネットでは「NHKが隠ぺい工作をしている」とにわかに騒ぎ出す人々が現れた。

 するとこれに便乗したのか、どこからか「NHKのディレクターは埼玉の厚生施設で容疑者と接触していたようだ」「NHKが取材時間やスタジオの見取り図の情報を犯人に流した」などと根も葉もないデマが飛び交うようになる。

 さらに、世間の関心の高い事件や人物についてまとめる「トレンドブログ」はさっそくこの“NHK陰謀論”に飛びつき、当該ディレクターの名前や顔写真、などの個人情報を特定。ネット上で拡散し始めた。


こうしたデマを真に受けてか、NHKが現場取材を通じてスタジオ付近の公園で犯人の目撃情報があったことや、ガソリン携行缶の段ボールや着火剤の袋が捨てられていたことを報じたことさえ不審がる声もネットで上がった。

 「NHKニュース」の公式Twitterアカウントには、「なんでNHKが警察より先に発見できたの?」「リポートしてないで鑑識に回せよ」「なんかモヤモヤする」などと、攻撃的なリプライが複数飛んでいる。

陰謀理論が発生するほどに事件の衝撃が強かったということはいえるだろう。また、人格システムの安定には、フェイクであれトンデモであれ、事件の原因は取り敢えずあった方がないよりはまし、ということもあるのだろう。NHKは偶々事件の直前に仕事で現場を訪問していたこと、また報道機関として詳しい取材をしたことによって、偶然を厭う連中の餌食になってしまった。勿論、ちょっと退いて考えれば、「陰謀」のコストと「陰謀」によって得られるであろう利益は全く釣り合わないということは直ぐに気付くだろう。また、この妄想と(伝えられているところの)犯人による妄想*2とはそれほど距離があるようにも思えない。