結騎了「物語の「トンネル」を通りたくない人は意外と多いのかもしれない」https://www.jigowatt121.com/entry/2019/02/17/233313
タイトルにある「物語の「トンネル」を通りたくない人」というのは、物語の途中の複雑な構成に付き合うことを厭い、ストレートに結末を知りたがる人、或いは単純なストーリーを好む人、ということなのだろう。しかし、そんな人は昔から沢山いたんじゃないの? 古き良き昭和の時代劇というのはまさにそういう人たちのためにあったとも言える。最近、またそういうのが増えているの? 結騎氏の書き方によれば、そうみたいだ。
ところで、私が疑問に思うのは「トンネル」というメタファー。あくまでも私の主観にすぎないのだけど、「トンネル」というのと迷うことは結び付かない。或いは、「トンネル」で迷ったりしない。普通の場合、「トンネル」のなかに分岐点や十字路はなく、距離が長くてうんざりすることはあっても、1本しかない道を進んでいけば、必ず出口に突き当たる。野球用語の「トンネル」は、打球が野手の股間をスムーズにすり抜けていってしまうことを謂う。そういえば、70年代の野球盤には〈消える魔球〉という設定があったのだけど、これも「トンネル」。実際、「トンネル」は何のためにあるのかといえば、回り道を回避して、目的地に最短距離で行くためなので、その意味では、単純なストーリーを好む人と同じである。
「トンネル」からは、例えば大貫妙子さんが歌った、
というイメージは喚起できない。
いくつもの偶然から あなたにひかれてゆく
星は瞳に落ちて
いくつものの 夜を超えて渡った時の迷路
解きあかしてきたのに
(「彼と彼女のソネット」*1)

Boucles d'oreilles (ブックル ドレイユ)
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と書いていたけれど、これは関係ないのか?
(前略)プレイヤーは、ああでもありえ、こうでもありえたようなシナリオの一つを選びたいわけではないのだ。そうではなく、プレイヤーは、そうであるべくすでに決まっている展開に身をゆだねたいのである。彼は、主人公の身の上に定められている「現実」を――彼はほんとうにあの美少女と結ばれるのだろうか等を――知りたいのだ。(後略)(『不可能性の時代』*2、p.214)

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