鈴木志郎康

今朝起きたら、ファッション・デザイナーのヴィヴィアン・ウェストウッド、サッカーのペレ、建築家の磯崎新の訃報が飛び込んできた。また、数日前には渡辺京二氏が亡くなった。
さて、詩人/映像作家の鈴木志郎康*1が9月に他界したことは、11月になって初めて知った。


大井浩一*2「衝撃の実験と、にじみ出す叙情」『毎日新聞』2022年11月7日


曰く、


「60年代詩人」として天沢退二郎吉増剛造岡田隆彦(故人)、渡辺武信の各氏と戦後の詩壇に新風をもたらした。1960年代に登場した世代を指すが、80年代初めに現代詩を読み始めた記者の場合も、名高い「プアプア詩」をはじめとする鈴木志郎康作品との出会いは衝撃だった。
もちろん、性愛の直接的でグロテスクなまでに斬新な表現も驚きだったが、底に流れる青年の屈託が独特な叙情を生み出していたのに強い印象を持った。だから、鈴木さんが2000年に「攻勢の姿勢」という初期の詩集成を出した時は迷わずインタビューを申し込んだ。
60年代詩人が安保反対闘争などの社会の激動から影響を受けたことは知っていた。だが、その取材で、鈴木さんが自ら「僕は安保世代」と語り、「プアプア詩」を書いた当時はNHKのカメラマンとして広島勤務だったことを聞き、創作の深い背景を理解することができた。
大井氏は映像作家としての側面については殆ど言及していない。私にとっては、鈴木志郎康とは先ず第一に個人映画作家だった。独白する自分を只管記録した『15日間』を四谷のイメージ・フォーラムに観に行き、鈴木氏のトークを聴いて、その後に現代詩文庫の『鈴木志郎康詩集』を買ったのだった。
大井氏も述べているように、鈴木志郎康といえば「極私」。90分の映画『15日間』はその極致であろう。ただ、その「極私」というのは表現行為(アート)が存立する必要条件であるということはその頃まだ自覚していなかった。勿論、表現行為(アート)は極私的であると同時に公共的であることが要請されているわけだけど。徹底的に閉じられているとともに徹底的に開かれていなければならない。
萩尾望都マンガの魅力』という本を手に取ったのは、さらにその後だっただろうか。『読売新聞』の記事;

詩人・映像作家の鈴木志郎康氏が死去…87歳、NHK勤務のかたわら同人誌「凶区」創刊
2022/09/15 15:17


 詩人で、映像作家の鈴木志郎康氏(すずき・しろうやす、本名・康之=やすゆき=)が8日、 腎盂じんう 腎炎で死去した。87歳だった。告別式は近親者で済ませた。喪主は長男、草多(そうた)氏。

 NHKカメラマンとして勤務するかたわら、1964年に天沢退二郎さんらと同人誌「凶区」を創刊。68年に詩集「罐製同棲又は陥穽への逃走」でH氏賞、2008年には「声の生地」で萩原朔太郎賞。映像作家としても「日没の印象」「15日間」などを発表し、日本の日記映画の草分け的な存在として活躍した。
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20220915-OYT1T50161/