ネアンデルタール、フランケンシュタイン

承前*1

神庭亮介「妊娠したラブドールが問いかけるもの 菅実花が向き合う「女神と怪物」」https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/ninshin-shi-ta-ra-bu-do-ru-ga-toi-ka-ke-ru-mo-no-josei


新作「三女神」を横浜市の「黄金町バザール*2に出品した、アーティストの菅実花さんへのインタヴュー。「妊娠したラブドール」という題材、「ラブドール」と「生殖」というテーマの原点を巡って。


[「ラブドールの造形美に魅せられ」たのと]相前後して、東京大学ネアンデルタール人の骨をクリーニングするアルバイトを経験したことも、ひとつの契機になった。

化石についた土を、竹串などを使って丁寧に取り除く仕事だ。

「いま触っているこの骨は、人間とは別ものだと思って作業してたんです。でもある日、2歳ぐらいのネアンデルタール人の歯の化石が出てきて」

「人間の歯だ!って思った瞬間、それまでクリーニングしてきた骨は『死んだ人間』だったんだ、と認識が変わりました」

ネアンデルタール人と現生人類は交雑していたとされ、現代人もネアンデルタール人由来の遺伝子を持っている*3

「遺伝子が混ざっているという話を読んで、もうわからなくなるというか。すごく遠いご先祖さまだったのかな、みたいな気がしてきて…」


人間と非人間。生命って何なんだろう。このころ出会った1冊の本が、そんな疑問をさらに深めることになる。

メアリー・シェリー作「フランケンシュタイン*4スマホ青空文庫の翻訳をむさぼり読み、あまりの面白さに原書まで取り寄せた。

若き科学者フランケンシュタインは墓を暴き、死体をつなぎ合わせて怪物をつくりだす(※誤解されがちだが、フランケンシュタインは怪物ではなく、怪物をつくった科学者の名前)。

作品には、メアリー自身の死生観が反映されているとも言われる。

メアリーの母親は、彼女を産んですぐに産褥熱で亡くなってしまう。16歳で詩人と駆け落ちしたメアリーも、伝染病や早産、流産などで子ども5人のうち4人を失う。夫も若くして溺死している。

「生と死がものすごいスピードで起こっている。自分が生まれた時に母親が亡くなっているということは、恐らく彼女自身が出産した時にも『死ぬかもしれない』という思いを抱いたのではないでしょうか」


作中の怪物は孤独にさいなまれ、自分と同じ人造人間の伴侶をつくるようフランケンシュタインに迫る。

渋々引き受けたフランケンシュタインだが、怪物の一族が繁殖することを恐れ約束を反故にする。

フランケンシュタインは同情して女の怪物をつくり始めるんですけど、途中で壊してしまう。子どもが生まれるかもしれないから、と。その時、あれ?と思ったんですね。人造人間にも妊娠する可能性があるのかって」

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

小説『フランケンシュタイン』については、廣野由美子『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』を再度マークしておく。
批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)