進化論の復習

4月1日付の吉村洋文のツィート;

千葉雄登*1「「大阪は感染を抑えすぎた」はミスリード?「子どもに感染しやすい」は本当?変異ウイルスの影響を感染研所長に聞く」https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/covid-19-n501y


吉村に言及された脇田隆字氏へのインタヴュー記事。
吉村ツィートにコメントする前に「ウイルス進化の考え方」を説明している。


生物の進化について、ダーウィンは「種の起源」を説明し、自然淘汰されていく中で生き残るのに適した性質を持っているものが生き残っていくと唱えました。例えば、より感染性の強い変異株は生き残りやすいと考えることができます。

しかし、それだけではどうにも説明できないことがある。それを説明可能としたのが、国立遺伝学研究所の木村資生さん*2が提唱した「進化の中立説」です。

この「進化の中立説」において、遺伝子の置き換わりが起きやすい状況とはどのような状況なのか。

それは集団が小さいときです。

遺伝子の中では常にランダムな形で、遺伝子の「浮動」と呼ばれる現象が起きています。「浮動」とは、ある特定の遺伝子が占める割合が、偶然変動する現象です。その浮動による影響は集団が小さいほど大きくなりやすい。

そのため、「ボトルネック効果」や「ファウンダー効果」と呼ばれる現象が引き起こされるというのが基本的なウイルス進化的な捉え方です。

ボトルネック効果:隔離された集団の個体数が著しく減少したときに、生き残った遺伝子の浮動が促進されること。遺伝子の均一性が高まる。

*ファウンダー効果:隔離された集団で、祖先となった少数の遺伝子の偏りの影響をより強く受けること。

これを新型コロナウイルスに置き換えると、どうなるのか。

ウイルスが、あまり感染者がいないところにポンと入り込む。すると、「ファウンダー効果」によって、その地域でそのタイプのウイルスが感染拡大します。

これは、現在の東北で起きている現象です。特に宮城では首都圏で感染拡大していた「E484K」が主流となっています。これは、まさに「ファウンダー効果」によるものと考えることが可能です。

まあ「 ボトルネック効果」なのだけど。

ーー関西についても同じように、感染者数の減少が変異ウイルスの感染拡大に影響したと考えて良いのでしょうか?


3月31日のアドバイザリーボードの記者会見で、東京と大阪の違いは何ですか?と尋ねられたので、私は「大阪はかなり感染者数が減少し、ベースラインが下がっている」「東京はベースラインが高いですよね」と伝えました。

その上で、ウイルス学的に見れば、集団が小さくなったことでウイルスの置き換わりなどが起きやすくなった可能性があるとお伝えしました。

先ほどの変異株の従来株に対する増加率の変化の図をみていただくと、関西では比較的早く立ち上がっていますが、関東では3月の中旬になってようやく立ち上がってきました。クラスター対策などの影響もあるので、この違いの理由を説明をするのは難しいのですが、一旦割合が増え始めるとほぼ同じ速度で増加していくと考えています。

その場ではもう1つの可能性についてもあわせて言及しています。

それは、同じ「N501Y」変異ウイルスと言っても、大阪と東京では入り込んだウイルスの系統に少し違いによる影響も考えられるということをその時点では考えていました。


ーー「大阪は感染を抑えすぎた」ということは?

「抑えすぎた」ということはなく、感染はできる限り抑え込んだ方が良いです。

しかし、いつかは対策を緩和する必要があります。そのタイミングと、緩和は徐々に進めるということが重要と思います。ちょうど年度末にさしかかる時期でしたので、緩和を慎重に進めるべきだったとは感じます。

ここでも、木村資生『生物進化を考える』をマークしておく。
生物進化を考える (岩波新書)

生物進化を考える (岩波新書)