羽田圭介*1「羽田圭介の地名と作品 王子 『いつか王子駅で』」『ふれあいの窓』(東京都交通局)310、p.12、2021
堀江敏幸『いつか王子駅で』*2をスターターに「王子駅」を語る。
堀江敏幸『いつか王子駅で』では、翻訳をしたりしている男性「私」が〈路面電車の走る街に越してきて半年ほどたった春先〉、定食も出す居酒屋で印章彫りの正吉さんと知り合う。とある日、正吉さんが、大切な人に渡すのであろう荷物を居酒屋に置いたまま出てしまい、気づいた「私」は荷物を抱え路面電車のホームへと向かうが、〈一両編成の黄色い逃げ馬は後ろを振り返ることもなく〉走り去ってしまう。
僕が王子駅で初めて下車したのも、高校三年生の一学期末、江戸川区陸上競技場でいくつかのトラック競技を終えた後だった。通っていた学校の校庭が狭かったため、毎年その時期に、体力測定の大半をそこで行っていたのだ。昼過ぎに終えると男たち三人で「(ドラゴンアッシュの)KJが『公開処刑』でZEEBRAにディスられてショックだったらしいよ」等話しながら、三人のうち一人が住んでいる王子へと向かった。会話の内容を覚えているのは、誰かが誰かを”公然と”傷つけるということについて、当時の僕にはわからないことが多かったからだろうか。王子の友人の家に行くと、ヴィデオゲームで初めてモノポリーをやった。翌朝、修学旅行のため羽田空港へ行き、北海道へ旅立った。だから僕の中では、王子とディスリスペクトとモノポリーと北海道がひとまとめになっている。
- 作者:敏幸, 堀江
- 発売日: 2006/08/29
- メディア: 文庫
*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/07/15/090055 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2020/10/07/150340 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2021/03/15/103550
*2:Mentioned in ttps://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20071107/1194459675 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20071108/1194514517 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20071203/1196703664